人々の健康に資する商品の提供と女性による宅配モデルを事業活動の軸にする。SDGsの課題に貢献しつつ、“ファン”を増やすことで事業拡大につなげている。

 ヤクルトは、乳酸菌飲料による“おなかの健康”の提供と、商品を消費者の自宅に届ける販売員「ヤクルトレディ」の宅配を事業活動の柱としている。これらはそれぞれSDGsの目標3(すべての人に健康と福祉を)や目標5(ジェンダー平等を実現しよう)に貢献するものだ。このビジネスモデルはSDGsが登場する以前から続けてきたものであり、同社は本業を前進させることでSDGsへの貢献やESG経営にもつながると考えている。

 創始者・代田稔が予防医学に力を発揮する微生物の働きに着目し、「乳酸菌シロタ株」の培養に成功したのは1930年のこと。1935年にはこの乳酸菌を使った「乳酸菌飲料ヤクルト」を発売した。2019年1月にはデンマークでの販売を開始し、販売拠点は日本を含めて39カ国・地域に拡大した。現在、国内に10カ所の乳製品工場、海外に28の事業所を展開している。

「ヤクルトの基本的なレシピは各国・地域で共通している。日本発の安全・安心で高品質な乳酸菌シロタ株を使用し、日本の生産技術とヤクルトレディの販売ノウハウを海外移転することで、雇用創出や女性の社会進出にも貢献している」と広報室CSR推進室長の山田勝土氏は語る。

ヤクルトレディへのこだわり

 同社のビジネスの特徴は、ヤクルトレディが消費者宅に商品を直接届ける宅配モデルだ。1963年に始まった。現在、ヤクルトレディはアジアや中南米を中心に13カ国・地域(日本を含む)で活躍し、その数は8万人を超えている。

 各国でヤクルトレディを教育する際は、商品知識だけでなく、人々の健康生活を支えるという企業理念や、商品を手渡す時に交わす言葉の中で健康意識醸成を促す健康アドバイザーとしての役割があることも伝えている。訪問宅では声をかけて体調を気遣い、話し相手になるという役割がある。

 一軒一軒回って販売するスタイルは、「家庭の中で健康になってもらう」という発想から生まれた。家庭の中での健康を実現するには、家族の健康をつかさどる主婦にアドバイスするのが効果的だと考えた。こうして、家庭の主婦と同じ立場で話ができるヤクルトレディによる事業が始まった。

■ インドネシアのヤクルトレディ
乳酸菌や腸の健康の大切さがあまり知られていなかったインドネシアでは、現地のヤクルトレディの果たす役割は大きい
(写真提供:ヤクルト本社)

 現在ではヤクルトはスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店でも販売しているが、同社ではヤクルトレディによる宅配モデルにこだわりを持っている。2018年度第2四半期で、ヤクルトレディによる売り上げとそれ以外の売り上げの数量は、ほぼ5:5だが、ヤクルトレディのほうが依然として若干多い。コストはかかるものの、宅配モデルを継続する理由について、山田氏は次のように語る。

 「ヤクルトレディは地域の人々の健康維持・増進に寄与する活動であり、SDGsへの貢献やESG経営の点からも意味があると考えている。地域の健康を担うという意識をヤクルトレディが持つことで、彼女たちの仕事に対するモチベーション向上にもつながる」

 海外ではヤクルトレディとして働くようになったことで家計に余裕が生まれ、子供に良い教育を受けさせられる効果も出ている。地域コミュニティの維持、女性のエンパワーメントに加えて、子供の教育機会の拡大という点でもSDGsに貢献する。そうした活動が日本政府からも評価され、ヤクルトは2018年末に第2回ジャパンSDGsアワードで特別賞「SDGsパートナーシップ賞」を受賞した。

 自宅訪問というビジネスモデルから派生した新しい取り組みも出てきた。自治体から委託を受け、高齢者の家を訪問してヤクルトを届けながら、安否確認を行う「愛の訪問活動」がそれだ。1972年に始まった同活動では、一人暮らしの高齢者など年間4万人を訪問している。