東京から世界に向けて食文化を発信する「TOKYO FOOD LAB」。魅力ある街づくりでSDGs実現に貢献する。

TOKYO FOOD LAB
(写真提供:東京建物)
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 東京建物は2019年9月、東京・京橋に「食」をテーマとする施設「TOKYO FOOD LAB」を開設した。同社はここを、食の世界でイノベーションを起こすための実証実験・社会実装の場と位置づける。

 施設の1階には、生産性の高い植物工場の運営で国内外から注目を集めるプランテックス(千葉県柏市)の植物工場兼研究施設「PLANTORY tokyo」が入居する。2階では、料理人支援やレストランプロデュースなどを手がけるケイオス(東京都中央区)がイノベーティブコミュニティー拠点「U」を運営する。

 東京・八重洲に本社を置く東京建物は、周辺の日本橋、京橋エリアに多くのビルを所有する。都市開発事業部事業推進グループ課長の沢俊和氏は、「江戸時代、日本橋には魚市場、京橋には青物市場があり、食文化の中心だった。そんな経緯から、このエリアには現在も老舗料理店や名店が集まり、食に関連する企業が多い。歴史と地域性を生かした街づくりをしたいと考え構想を固めた」と、「TOKYO FOOD LAB」開設の背景を説明する。

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1階は世界トップクラスの技術と生産性を誇る植物工場「PLANTRY tokyo」
(写真提供:東京建物 写真右:木村輝)
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2階は食のイノベーティブコミュニティー拠点「U」
(写真提供:東京建物)

生産性5倍の植物工場

 プランテックスが「PLANTORY tokyo」に備えるのは、閉鎖型の植物栽培装置「Culture Machine」だ。棚ごとに密閉した設備で光、空気、養液を精緻に制御できる。一般的な植物工場は温度、湿度、CO2濃度などを管理するが、ここでは光合成速度やCO2吸収速度、吸水速度なども制御して成長を促す。独自のハード、ソフトの技術により、従来の植物工場に比べて面積生産比で5倍の収穫重量という高い生産性を実現した。

プランテックスの山田耕資社長は、「国連食糧農業機関(FAO)によると、人口増加により2050年には世界で現在の1.7倍の食料生産が必要になる。農業用水は水の需要の約7割を占め、水不足の懸念も大きい。都市部でも高効率に野菜を栽培できる植物工場は、飢餓や水不足を解決するキーテクノロジーになる」と取り組みの意義を強調する。

 今後は生産性だけでなく野菜の味や香り、栄養価などを高める研究も進める方針。「ビタミンを多く含むレタス」など、用途に応じた栽培で世界の食料・栄養問題の解決に挑む。

 プランテックスは東京駅に近接する地の利を生かし、「PLANTORY tokyo」をショールームとしても活用し、システムの販売につなげる。開設から2カ月で既に大手流通業者や重工メーカーなどとの間で大型植物工場建設の話が進む。医療、美容、健康などの分野での応用にも関心が高く、さまざまな事業者から問い合わせが寄せられている。

一方、ケイオスが運営する「U」は国内外のシェフや食に携わる人々がつながり新たな価値を創出することを狙ったコミュニティー拠点だ。

 「U」では、世界の名だたるシェフらが料理をつくる過程を動画で撮影する。分子工学、行動解析、栄養学などの専門家が、「料理の手順」「材料の切り方」「火の入れ方」などを科学的に分析して言語化する。動画をアーカイブ化し、ナレッジや技術を共有できる仕組みにすることで、シェフの経験知を誰もが理解しやすい形式知へと転換するのが狙いだ。

 イタリア・ローマのミシュラン3つ星レストラン「ラ・ペルゴラ」シェフのハインツ・ベック氏、大阪の同1つ星レストラン「リュミエール」オーナーシェフの唐渡泰氏らの協力を得ることが決まっている。

 「U」では会員組織をつくり、会員はアーカイブとして蓄積した動画を閲覧できる仕組みにする。「一流シェフの知見を幅広く活用することで、和・洋・中の領域を超え、世界の食の調理方法、メニュー、楽しみ方などにイノベーションを起こしたい。また、街中のレストランのランチや学校給食がおいしく栄養豊かになるなど、身近な食のレベルの底上げも図れると考えている。目指すところは、世界の食のアップデート」と、沢氏は展望を語る。

 今後は、最新テクノロジーを有する「PLANTORY tokyo」とシェフのネットワークに強みを持つ「U」とが連携することで、フードテックの分野での成果を生み出すことも期待できる。「テクノロジーとシェフのクリエーティビティーの結合は、世界でも事例が少ない。『日本で食について学び、新たな挑戦をするなら京橋に行けばいい』と思ってもらえるような食文化の発信地にしたい」と沢氏は意気込む。

 東京建物は、これらの取り組みを、八重洲・日本橋・京橋エリアを活性化する街づくりの一環として進めている。