タイヤの需要が増える中、原料となる天然ゴムのサステナビリティが求められている。横浜ゴムは独自の活動と業界を挙げての活動の両輪で、CSR調達を目指す。

 横浜ゴムは2018年10月、「持続可能な天然ゴムの調達方針」を発表した。天然ゴム調達のサプライチェーンを通じて、環境に配慮し、関わる人々の人権を尊重し、またそれらが適切に行われていることを担保する「トレーサビリティー」を構築するなどの具体的な方針を盛り込んだ。

タイヤの持続可能性を担保

 天然ゴムは「ゴムの木」から採取する。その生産地域によっては、違法な森林伐採で農地を確保して生物多様性に影響を及ぼしていたり、労働者に対する人権侵害や違法な土地収奪といった社会的・人権的な課題を引き起こしたりしている。

 天然ゴムを大量に使用するタイヤメーカーは、こうした課題解決への取り組みを求められてきた。近年、人口増加やモビリティ産業の発展により、世界の天然ゴム消費量は増えている。将来にわたってタイヤ製造のバリューチェーン全体が持続可能な事業を続けるため、横浜ゴムも行動に着手する必要があった。

 調達方針では、具体的な方針を示したほか、取り組みの進捗を公開し、活動で得た知識・経験や、ステークホルダーからのフィードバックを取り入れ随時、改訂することも明記した。天然ゴムのサプライヤーや商社の協力を得ながら実現を目指す。

 調達方針の策定に先駆け、2016年に横浜ゴムは、天然ゴム生産者と消費者をはじめとするステークホルダーで構成された政府間組織「国際ゴム研究会(IRSG)」が進める「天然ゴムを持続可能な資源とするためのイニシアチブ(SNR-i)」に参画。これをきっかけに、同社は違法な伐採に一切加担しないことを宣言した。

 タイヤ業界で天然ゴムの持続可能な利用に向けた機運が高まっている。世界のタイヤメーカー大手11社が2018年10月、シンガポールで開かれたWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)の関連イベントで「持続可能な天然ゴムの調達を目指すプラットフォーム(GPSNR)」の設立を発表。横浜ゴムも参加した。

 同社グローバル調達本部長代理 兼原料調達部長を務める梁取和人氏は、「タイヤメーカーは原料供給の最上流に当たる天然ゴム栽培の現場から一気通貫で持続可能性を確保する責任がある。業界を挙げてその実現を目指すGPSNRと、我が社は歩調を合わせて取り組む」と語る。

 同社はかねてより、調達先であるタイの天然ゴム加工工場「Y.T.ラバー」と協力し、現地の大学の協力も得ながら「アグロフォレストリー農法」に取り組んでいた。

 ゴムの木は植えてから樹液を採取できるまでに約7年かかり、農家はその間、収入が得られない。アグロフォレストリー農法は、他に果樹などを植えることでゴムの木の生育中も農家が安定収入を得られるようにするものだ。

 天然ゴムの作付面積を増やすため無法図に違法伐採が広がるのを防げるうえ、様々な種類の木で森を作ることで生物多様性を確保でき、混植によってゴムの木の抵抗力が増し、収量が増えるメリットもある。

 同社はこの活動を2016年に始め、徐々に近隣の農家へと広げている。農家の暮らしや、森の豊かさにも貢献する。SDGs(持続可能な開発目標)にも貢献する取り組みだ。2016年から天然ゴムサプライヤーと交流し、問題意識を共有するサプライヤーズデーを開いている。2018年に続き2020年に3回目を開催する。新たな活動も2019年度から始めた。その1つがタイ南部のスラタニ県で農家を訪問するCSR調査だ。

■持続可能な天然ゴムの調達に向けた活動と取り組み
WBCSDは「持続可能な開発のための世界経済人会議」、TIPは「タイヤ産業プロジェクト」、IRSGは「国際ゴム研究会」、SNR-iは「天然ゴムを持続可能な資源とするためのイニシアチブ」、GPSNRは「持続可能な天然ゴムの調達を目指すプラットフォーム」
(出所:横浜ゴム)
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