ゴム園を戸別に訪問

 横浜ゴムのスタッフが、農家を1軒ずつ訪れ、農業排水の状況から農家従業員の労働時間まで、環境配慮や労働環境に関する聞き取りをしている。

 日本人の社員は、現地の人々と言葉が通じない。そこで、社員自ら作成した「紙芝居」を使い、農家の従業員と直接、顔を合わせながら意見を交換する。

 同社原料調達部企画管理グループリーダーの石井敦氏は、「天然ゴム農家は全世界で600万人に上る。そのうち横浜ゴムのサプライチェーンに関わるすべての農家を訪問するのは時間がかかる。とはいえ、トレーサビリティ確保の最初の一歩として着手した」と話し、続けて「農家の考えや本音を理解し尊重するためにも、直接の個別訪問と対話を地道に継続していく」と話す。

 これらの活動は世界最大の天然ゴム生産国であり、同社の調達先としても2番目に多いタイで始めた。タイは天然ゴムの輸出にかかる関税の一部を農家に還流することで、国がゴムの木の新規植樹を支援している。一方、生産量が世界2位で同社最大の調達先であるインドネシアにはこのような仕組みがない。ゴムの木の植え替えが進まないことから、一本の木から採れるゴムの量はタイに劣るという。

 梁取氏は、「インドネシアでは生産性が低いために収入が伸びず、ゴム栽培をやめてしまう農家が増えている。この悪循環を断ち切るため、若い農家に対する農業教育、資金援助などを2020年度からインドネシアで始める計画だ」と話す。

業界基準づくりも推進

 一方、タイヤ業界を挙げたプラットフォームとして始まったGPSNRに、天然ゴムの生産者や自動車メーカー、NGOなども加わった。タイヤメーカーは現在、13社が参加している。

 参加するすべてのステークホルダーが協力し、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献も考慮しながら、持続可能な調達のための業界基準を作る考えだ。そこには横浜ゴムが現地調査から得た知見も生かされる。

 石井氏は、「ゴムの樹液は深夜から未明にかけて採取する。そのため、天然ゴム農家の従業員に、日本や欧米の会社員のような労働基準を適用することが必ずしも適切とは言えない。彼らの考えや働きやすさを尊重しながら業界基準を策定するため、議論の最初の一歩を踏み出したところ」と説明する。

 同社でCSR本部長代理を務める森智朗氏は、「調達方針の策定やGPSNRへの参加は、持続可能な調達を実現するための種まきの1つ。ここから腰を据えて、原料生産の現場をはじめとするサプライヤーと対話を重ね、すべてのステークホルダーが“Win-Win”となる環境づくりを進める」と語る。

 横浜ゴム独自で進める活動、そして業界を挙げたプラットフォームで展開する活動を両輪とし、さらに取り組みを活発化させていく構えだ。