プラ問題と気候変動で戦略

 世界的にプラスチックによる自然や環境への影響に対する関心が高まっている。海洋などに不法に投棄されたプラスチックの問題に加え、石油を原料とすることから製造時にCO2を排出するため、気候変動への影響も指摘される。とはいえ、例えば食品パッケージとして品質と安全を保つ目的から、エコカーに軽量素材として使われ燃費改善に貢献するなど、生活を便利にする、欠かせない素材として広く採用されている。

 プラスチック製品を製造する三井化学にとっても、気候変動とプラスチック問題は避けて通れない重要なテーマだ。同社は06年に「経済・環境・社会」を経営戦略に統合する「3軸経営」を打ち出し、長期経営計画では経済に加えて環境・社会の重要課題も特定、取り組みを明確化した。18年4月にはそれまでのCSR部門を改めてESG推進室を設立し、ESG経営を加速させている。

 気候変動やプラスチック問題への対応も、重要課題に含まれている。その具体的な一歩が、気候変動対応方針とプラスチック戦略の策定だ。

 三井化学の右田健・ESG推進室長は、「気候変動とプラスチック問題は表裏一体のものと捉えている。プラスチックを人間の暮らしを豊かにする素材と位置づけ活用し続けながら、生産から使用、廃棄という一方通行から脱し、使用済み素材の回収とリサイクル、リユースまでを含む循環経済を推進する。その実現こそ化学メーカーの存在意義と考える」(下図)と話す。

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気候変動とプラスチックごみ問題は表裏一体として、戦略を考案(左)、バイオマス原料による、バイオポリプロピレンの実用化を目指す(右)
(出所:三井化学)

 同社の気候変動対応方針は、製造工程の低炭素化や製品によるCO2削減を軸とした「緩和」策と、気候変動リスクに強い社会を実現する「適応」策で構成される。一方のプラスチック戦略は、バリューチェーン全体を視野に入れた循環経済モデルを推進するため、バイオポリプロピレンなどの「バイオマスプラスチック」、そして「リサイクル」の2つを軸にした。

リサイクル技術を高める

 気候変動とプラスチック問題の双方に対処するための共通の対策として、リサイクルは欠かせないテーマだ。プラスチックの効率的なリサイクルにより、エネルギー消費とプラスチックごみの削減に寄与できる。

 プラスチックのリサイクルには大きく分けて、素材として再利用する「マテリアルリサイクル」と、プラスチックを原料油に戻して利用する「ケミカルリサイクル」、プラスチックの焼却熱を利用する「エネルギー回収」の3つがある。三井化学は、既存技術の活用と新技術の開発によって、プラスチックの生産から効率的なリサイクルまでを循環できる経済の構築に貢献する考えだ。

リサイクル性の向上に貢献する、モノマテリアル包材を提案。関係企業との組織横断的な協力が重要となる(写真提供:三井化学)

 具体的には、クルマから回収された廃プラスチックを高い品質でリサイクルする技術の実証の他、リサイクルしやすいモノマテリアル(単一素材)包材の提案などを進めている。プラスチックのみで構成された包材はアルミなど異素材を組み合わせた素材と比べて高い品質のリサイクルが可能になる。

 将来的には単一素材の食品包材などを自社で回収して原料に戻す事業を検討している。ただ、実現には包材メーカーや包材を使う食品メーカー、そして使用済み包材を収集する仕組みの構築までが必要になる。

 右田ESG推進室長は、「実現には多くのステークホルダー(関係者)との連携が鍵になる。世界的な課題であるプラスチック問題、そして気候変動に、わが社は技術で貢献する」と展望を語る。気候変動対応とプラスチック戦略の両輪で、環境負荷低減に向けた取り組みを進めていく。