高齢化と人口減少に悩まされている郊外の団地を、魅力あふれるまちに「再耕」する動きが進んでいる。成功へのカギは、オープンイノベーションと規制緩和、そして住民の自発性を促すことにある。
高度成長時代に建設された郊外の戸建住宅団地やニュータウンは、誕生から半世紀あまりが過ぎて住民の高齢化が目立ってきた。当時、「夢のマイホーム」と呼ばれた家々は老朽化が目立ち、空き家も増えている。人口減少もあいまって、このままではまちの活気がどんどん失われてしまう。
そんな状況に危機感を抱いた大和ハウス工業は、住民や行政、企業などと協力して、郊外の団地を再び賑わいのあるまちに「再耕」する「Livness Town(リブネスタウン)プロジェクト」をスタートさせた。
再耕とは文字通り、再び耕すこと。高度成長時代に郊外の田畑を造成し、宅地にしてきた場所を再び耕し直すことで、魅力あるまちに生まれ変わらせようという理念が込められたキーワードだ。
まちの価値を未来へつなぐ
大和ハウス工業では2015年10月に「まちづくりビジョン」を制定し、「まちの価値を、未来へ」というビジョンを掲げた。つまり、まちを常にアップデートしながら、その価値を未来へとつなぎ、持続させることを基本姿勢にしたのである。
そうした考え方のベースとなっているのが、社会貢献を重視する大和ハウス工業の創業者精神だ。サステナビリティ企画部グループ長の内田雄司氏は次のように説明する。
「創業者である石橋信夫は、『世の中の役に立つ商品やサービスの提供』を起点に事業を展開していた。当社のまちづくりは、この創業者精神に加えて、経営の判断基準として、それが将来にわたって良いことかどうかという点も重きを置いている」
郊外の団地の現状を放置すれば、将来の日本にとってよいことはない。それならば、目先の儲けを考えずに長期的な視点で解決策を模索しよう。その結果、地域が活性化できれば、大和ハウス工業が持続的なまちづくりに貢献できると考えたのである。
なかでも、1970年代に同社がまちづくりをした兵庫県三木市の「緑が丘ネオポリス」と横浜市栄区の「上郷ネオポリス」の再耕の様子を見ていこう。