主役は高齢のボランティア

 一方、横浜市栄区に位置する「上郷ネオポリス」は、約900世帯に約2000人が住む。栄区は、横浜市で高齢化が最も進んでいる区で、上郷ネオポリスにおいては高齢化率は50%を超えている。

 ここの再耕のきっかけは、「健康で時間と資産に余裕のある高齢者の老後をどう実りあるものにするか」という議論からだった。調査の結果、潜在的な能力や見識もある人たちがネオポリスに多く居住していることが分かり、そこで何かイベントを実施すれば、まちの再耕にいい結果をもたらすのではないかと考えたのである。

 「ご自身もニュータウンに住む脚本家の山田太一さんによる講演が忘れられない。住民を前にして山田さんは、『まちづくりを他人ごとに感じている人が多いだろうが、自分から進んでやろうと手を挙げる人を止めないでほしい』と語りかけた」と、ヒューマン・ケア事業推進部副理事の瓜坂和昭氏は回想する。

 これがきっかけで住民の意識が明らかに変化し、任期を区切らない「まちづくり委員会」が2週間後の15年1月に発足した。

 まず人が集まるコミュニティー施設やコンビニを作ろうという提案が出たが、ネオポリスは第一種低層住居専用地域にあるため、店舗や事務所の設置が困難だった。

 「その直後、国土交通省から買い物難民対策として、住民の要望があれば特例として商業施設を設置してもよいという話が出てきた。横浜市とも協議を重ね、設置許可まで1年半かかったものの、コンビニを併設した住民の憩いの場『野七里(のしちり)テラス』が完成した」(瓜坂氏)

 コンビニの店長・店員は住民から募集した。60代の店長2人のほか、高校生から82歳まで幅広い年齢層の住民が集まった。さらに、コミュニティースペースの運営や商品案内などのサポートとして70~80代を中心とした地域住民のボランティアを募集した。

 ボランティアには謝礼として、テラス内だけで使える地域通貨を配布したところ評判を呼び、高齢者のやりがいにつながるという効果をもたらした。

■ 住民が運営するコンビニ併設型施設を開設
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上郷ネオポリス(下左)には、コンビニのローソンを併設したコミュニティ施設「野七里テラス」を開設。店長とスタッフは地域住民から募集した。高齢者から子供までくつろげるスペースがあり、人々の憩いの場となっている(上の2点)。地域住民からなるボランティアスタッフがいて、高齢者の買い物などをサポートする役目を果たす。ボランティアスタッフには謝礼として地域通貨が配られ、こちらのローソンで使うことができる(右)(写真提供:大和ハウス工業)

 上郷でも緑が丘と同様、移動手段に難があった。移動手段のラストワンマイルについては、ゴルフ場で使うような電動カートを試験的に導入し、19年11月に実証実験を行った。運転手も住民が務め、最寄りのバス停や駅まで走らせたところ好評だったため、導入に向けた検討を始めている。

 これまでは様々な規制でこうした取り組みが困難だったが、潮目は変わりつつある。20年1月31日、横浜市と大和ハウス工業との間で、上郷ネオポリスとその周辺を対象にした「郊外戸建住宅団地の持続可能なまちづくりに関する協定」が締結された。今後は行政側の迅速な対応も期待できそうだ。

■ ラストワンマイルの不便さを解消
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地域の移動手段として巡回カートを用意(左)。運転はボランティアが行う。2019年11月からはローソンの移動販売も始まり、買い物の不便を解消するとともに、住宅街の通りに賑わいを創出している(右)(写真提供:大和ハウス工業)

「まちづくりごっこ」でもいい

 新規の宅地開発と違って、再耕の主役は、長年そこに住み続けた人たちである。それぞれの家に歴史や事情があり、考え方も様々だ。

 デベロッパーや行政がよかれと思って提案しても、住民の間にはいろいろな意見がある。上から目線で再耕を進めるのではなく、住民をサポートしていくという姿勢が欠かせない。

 「『まちづくりごっこ』でもいい。例えば、住民一人ひとりが、『明日ひまだからボランティアでもやろうか』というように、楽しくやってもらうことが大事。それぞれが自分自身のために動き、その結果としてまちづくりが進むというのが理想だと思う」(瓜坂氏)

 再耕がうまく進み、「ここに住んでいれば、将来にわたって楽しく暮らせる」と住民に思ってもらうことが、地域の人々、大和ハウス工業、行政にとって三方よしの結果となるだろう。