再エネを最大限に活用

 水素をエネルギーに利活用することには、様々な利点がある。第一に挙げられるのは、燃焼時に発生するのは水だけでCO2を排出しないという環境性能である。発電・総合効率の高いエネファーム1台を1年間使うと、約1tのCO2削減効果がある。HARUMI FLAG全体で4145台を導入することになっており、年間約4000tの削減になる計算だ。

 第二は、エネルギーを大容量で長期間、保存できる点である。しかも、保管や充放電によって劣化する蓄電池と違い、蓄電容量が減らないため、貯蓄しておけば、災害時などに利用できる。HARUMI FLAGでは非常時に備えて敷地内に水素ボンベを設置してあり、非常用発電機とともに停電時のバックアップ電源として使えるようにしている。

 第三に、水素は複数の製造方法があり、エネルギーセキュリティー上も有利である。都市ガスから水素を分離するだけでなく、水を電気分解して生成でき、褐炭からつくる方法も実用化されている。太陽光発電で余ったエネルギーを水素に変換して貯蔵しておけば、必要なときに電気にできる。つまり、再生可能エネルギーを最大限に活用できる。

■ 水素は環境性能に優れ、エネルギーの長期保存が可能
図版提供:パナソニック
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 地下にパイプラインを埋設することに対して、水素の安全性を不安視する近隣住民の声もあったが、住民説明会で安全性を説明することで理解を得た。具体的には、埋設するパイプラインを地上から120cmより深くし、道路工事などで損傷することがないよう防護用の鉄板を敷設する。さらに、センサーが異常値を検出すると即座に水素供給を遮断する仕組みになっている。

 HARUMI FLAGのような大きな規模で住宅開発を一斉に行うことは、極めて珍しい。それも、選手村として先行使用するためであるが、そのことがメリットになったと永田氏は話す。

 「通常は、何期かに分けて建設したり、道路や公園を先に開発することも少なくない。そうすると、それぞれに設計がなされ、統一感のあるきれいな街にならないこともある。HARUMI FLAGは、街全体を一気に開発することによって、これまでには考えられないほど統一感がある魅力的な街になった」

 しかも、通常なら開発事業者から仕様が示され、それに沿って提案・設計が行われるが、今回はかなり違っていた。どういう街づくりができるのか、早い段階から、開発事業者と各分野の企業がアイデアを持ち寄って議論を重ねた。