協創をキーワードとしてステークホルダーと新たな課題解決の方法を探る。藤沢工場に隣接した施設「いすゞプラザ」の展示を通じ、ブランドイメージの向上を図っている。

 2020年代を迎え、自動車業界は100年に一度といわれる変革の時期を迎えている。いすゞ自動車の事業の中核である商用車市場においても、電動化やコネクテッド技術などの普及によって大きな環境変化が予想される。

 そんななか、18年度から始まった3カ年の中計(中期経営計画)は、2020年4月からいよいよ最終年度に入る。この中計の背景にある考え方について、コーポレートコミュニケーション部 CSR推進グループ グループリーダーの古賀英明氏は、次のように解説する。

 「100年に一度の技術革新や、価値観の変化に、いすゞ自動車は変わらなくてならない状況にあり、今後は自動車やその部品などのハードを製造するだけでは、ステークホルダーの期待に応えられないだろうと強く認識している。当社としては、社会全体が抱える課題に対して、ステークホルダーとの協創活動を通じて、新たなソリューションを提供していく必要があると考えている」

インターネットで”つながる”トラック

 課題解決に向けた取り組みの代表例として古賀氏が挙げるのは、「プレイズム」、そして「25mダブル連結トラック」の開発である。

 プレイズムは、コネクテッド技術によって車両コンディションデータを活用し、故障に至る前に“未然に防ぐ”のに加え、入庫前に整備内容を把握し“すぐ直す”サービスだ。エンジンや消耗品の状態など、車両から自動発信されるデータを、インターネットを通じてスマホアプリやパソコンでリアルタイムで確認し、適切に対処できるのが大きな特長だ。

 ユーザーにとっては、故障を未然に防ぐことができ、物流を止めずに効率的な稼働計画が立てられるというメリットがある。一方、ディーラーやサービスセンターにとっては、突然の入庫が減って作業が平準化できると同時に、情報の事前把握によって整備時間が短縮できるというメリットがある。現在、コネクテッド化されたいすゞのトラックは、全国で20万台にのぼる。

 25mダブル連結トラックは、トレーラーを含めた全長が25mとなる車両を指す。いすゞ自動車が、大手運送事業者、架装メーカーと共同開発した車両で、1台で通常の2台分の輸送が可能となっている。トラック運転手の人手不足、高齢化という課題に対処するため、トラック輸送の省人化を図るのが大きな目的だ。

 中計にうたわれている「ステークホルダーとの協創活動」の一環として、地域社会との共生や次世代教育の場として位置づけられているのが、展示施設の「いすゞプラザ」である。いすゞ自動車創立80周年記念事業として、藤沢工場の隣接地に17年4月に開館した。

 「いすゞプラザでは、共感・体感を重要視しており、実際の車両を見て、触って、体感できる展示によって、いすゞへの共感が得られるよう意識している。身近な存在なのに、どこか近づきがたいと感じられているトラックの役割を理解していただきたい」(古賀氏)

 1年間に8万~9万人の見学者があり、19年末までに累計で30万人近くがこの施設を訪れている。展示は1階と2階の計3つのエリアに分かれている。1階は「『運ぶ』を支えるいすゞ」と題して、トラックのほか、バスなども展示し、130カ国以上で製造、販売をしているいすゞ自動車の実績を示している。

■2017年に開館した「いすゞプラザ」
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生活に身近な商用車について人々に理解を深めてもらい、ブランドイメージ向上につなげようと、2017年4月、藤沢工場の隣接地にオープンした
(写真提供:いすゞ自動車)

 なかでも目を引くのが、1日の暮らしをストーリー化して見せてくれる日本最大級のジオラマ「いすゞミニチュアワールド」だ。設置車両665台、うち45台のミニチュアのトラックやバスがモーターを搭載して自走し、人々の暮らしといすゞ自動車との関わりを深く感じることができる展示となっている。

 2階には、「いすゞのくるまづくり」と「いすゞの歴史と未来」のエリアがある。前者では、トラックの製造過程ごとに分けて詳細に展示し、構造や仕組みが理解できるように工夫している。

 「特に、将来、日本のものづくりを担う子どもたちに関心を持ってもらえるよう、VR(バーチャルリアリティ)で製造や塗装の体験ができるコーナーを設け、楽しみながら学べる工夫をしている」(古賀氏)

 環境配慮商品として、高効率なクリーンディーゼルエンジン、環境負荷の低い天然ガスエンジン、電気トラックについて解説しているほか、自動運転や安全への取り組みも紹介している。

 興味深いのは、効率的にトラックを運転できるかどうかを模擬体験できるエコドライブ・シミュレーターだ。これは、省燃費講習会の担当者が監修した本格的なものである。そして、「いすゞの歴史と未来」のエリアでは、これまでのいすゞの歴史を彩ってきた名車や未来につなぐコンセプトカーが展示されている。