千葉市との包括連携協定にのっとり、台風被害を受けた地域にEVを派遣し電力を提供した。平常時から使っている企業の資産が、地域の災害対策に役立つことが証明された。

 千葉県を直撃した2019年の台風は、停電の長期化という想定外の事態を引き起こした。「災害時には食料や水と同じくらい、電気の供給が必要とされていることを実感した」と、NTT東日本千葉事業部ビジネスイノベーション部マーケティンググループ第二マーケティング担当主査の八島隆氏は振り返る。

 19年9月9日未明に関東地方に上陸した台風15号では、千葉県内の広域で停電が発生した。千葉市も大きな被害を受け、被災直後は電力復旧のめどがつかない状況だった。

 こうした中、NTT東日本は営業車として使用している電気自動車(EV)を停電した地域に派遣し、電力を提供した。台風15号が過ぎ去った10日は35℃を超える真夏日で、冷房が止まったまま一晩を過ごした被災者に、体力の消耗が目立ち始めた時だった。

 まずはNTTドコモ千葉支店と連携し、同支店にある災害用の高速充電器でEV車を充電した。30分でバッテリー容量の8割を充電できる特別な設備だ。千葉市役所の災害対策室で被災状況を確認したところ、子供と高齢者が滞在する福祉施設から支援要請が来ていた。直ちに向かってほしいと具体的な施設名を指定されたので、市役所に乗りつけたEVでそのまま被災地へ駆けつけた。

 最初に訪れたのが、様々な事情で親元を離れなければならない子供たちのための施設、「響の杜学園」だった。身体の弱い3~5歳の子供たちもいるため、千葉市が緊急性が高いと判断したからだ。

 EVの電力はそのまま家庭用電源として使用することはできない。直流から交流に変換するため、重さ40kgほどの変換器(パワーコンディショナー)も運んだ。施設では子供たちが10人ほど並んで寝る広間に扇風機を設置し、明かりを灯した。翌日、電気が復旧するまでサポートを続けた。

 「帰り際、子供達が『ありがとう!』と無邪気に喜んでくれたのがうれしくて、やって良かったと思った」と同社千葉支店第一ビジネスイノベーション部第一バリュークリエイトグループ長の外口宏氏は話す。

 続いて入居者の多い特別養護老人ホームにEVを派遣した。暑さや暗闇による不安で入居者はすっかり消耗していた。電力を供給して扇風機をつけ、夜通し窓の外から車のライトで建物内を照らした。ガソリン車では長時間、ライトをつけたままにはできないが、EVなら、ひと晩中照らすことが可能だ。電気は翌12日にようやく復旧した。