人工衛星も“オール電化”が進み、さらなる小型・軽量化そして省電力化が求められている。窒化ガリウムを用いた新デバイスでそのニーズに応え、スマート社会の実現に貢献する。

 住友電工グループは2018年度から5カ年の中期経営計画「22VISION」において、「総力を結集し、つなぐ、つたえる技術で、よりよい社会の実現に貢献する」という基本コンセプトを掲げつつ、売り上げや営業利益などの具体的な数値目標を設定している。

 その考えの下、事業を通じて、社会課題の解決に貢献する製品・技術・サービスを提供するCSV活動にも力を入れている。

高出力で高効率なGaN HEMTは、携帯電話の基地局やレーダーシステムで広く採用されている他、人工衛星にも使われている。今後は第5世代移動通信システムを支え、次世代自動車や先端医療への応用も期待されている(写真提供:住友電工デバイス・イノベーション)

 社会貢献の観点から注目される事業の1つが、住友電工デバイス・イノベーションのエレクトロニクス部門が展開する電子デバイスだ。通信を事業の柱とする同部門では、化合物半導体材料の窒化ガリウム(GaN)を用いた新デバイス「GaN HEMT(高電子移動度トランジスタ)」を11年に製品化した。破壊耐圧に強い性質を持ち、高出力で高効率な電子増幅器を実現できるこのデバイスが、携帯電話網の通信基地局や空港をはじめとする各種レーダーシステムに採用されている。

 「5Gが登場した今、最新の通信インフラにもGaN HEMTが採用されていくめどが立った。『22VISION』の2年目に当たる19年度は、ビジョン達成に向けた事業の骨組みが固まってきた年だと考えている」と、同社電子デバイス事業部の佐藤富雄氏は進捗状況を評価する。

 従来の通信基地局ではシリコン系デバイスが主に使われてきた。近年、通信の高速化に伴い大容量データの送受信が急激に増えたことで、通信インフラにおいて高い出力に耐え、同時に低消費電力も実現するデバイスの登場が期待されていた。

 同社では、高出力・省電力の双方の特性でシリコンに勝る半導体材料として窒化ガリウムに着目した。特性をさらに伸ばすため、高周波を追求しつつ変換効率を高める研究開発に取り組み、GaN HEMTの製品化につなげた。まずは通信インフラやレーダーでの採用が始まり、実績を積み重ねながら、より高出力かつ高効率な省電力デバイスを目指してGaN HEMTの改良を続けてきた背景がある。