改造した天然ガス自動車をこれまでに1000台以上販売し、電気バスの納入も積み上げる。クリーンな自動車社会を目指しつつ、新たなソフトウエア・サービスにも力を入れている。

 神奈川県厚木市を拠点に創業以来、電気自動車(EV)などの開発・製作を手がけてきた。代表取締役の平野智一氏はこう語る。「今はたまたまEVを販売しているが、これから先のSDGs時代に当社のサービスはどうあるべきか、考えなければいけない」。

 自動車のCO2排出規制を強める欧州連合(EU)の動きを中心に、世界の自動車メーカー各社はEVへのシフトを鮮明にしている。そんな流れのなかで、「たまたまEV」と表現する真意はどこにあるのか。

アルペンルートに電気バス15台

 創業は1995年、低公害自動車の開発を目的として会社を設立し、商用天然ガス自動車の開発を始める。トラックのディーゼルエンジンを、天然ガスを燃料とする仕様へ転換したもので国内初の試みだった。

 きっかけの1つは米カリフォルニア州南部のオレンジ郡へ視察に行ったこと。天然ガス自動車が最も普及している場所として知られ、スクールバスも天然ガス自動車だった。嫌な臭いもない。ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる粒子状物質もない。そのクリーンな魅力に引かれ、3年後の98年には中型バスを改造した天然ガス自動車の販売を始めた。2008年までに納入台数は850台を超えた。

 その一方で、「天然ガスの次は水素」と考え、07年に武蔵工業大学(現・東京都市大学)と日野自動車の水素エンジンバスの共同研究に参加するなど、水素バスの設計・製造を始めた。ところが、「いっこうに水素バスは売れない」(平野氏)。いろいろ考えを巡らすことになる。

 水素自動車といっても、その方式は2種類ある。水素を直接燃焼させるエンジン形式と、燃料電池により、水素と酸素の反応で電気を得てモーターを動かす形式だ。後者は燃料電池自動車の原理となっている。

 問題は水素だ。水素ガスは主に化石燃料を分解するときに副産物として生まれる。原料が化石燃料である限り、水素を化石燃料の代替として利用したら、化石燃料の消費削減に本当につながるのか。

 「水の電気分解によって得られた水素ならクリーンでいい。もし化石燃料から作った水素を使うのなら、おかしいではないか」と平野氏は思い始めた。

 環境省の委託事業(15年度)で燃料電池ゴミ収集車の技術開発・実証を早稲田大学アカデミックソリューションなどと共同で進める一方で、フラットフィールドはEVにも注目する。

 事業に使うエネルギーの100%を再生可能エネルギーで賄うことを目標にした「RE100」に基づく電気を利用すれば、きれいな環境づくりに貢献できる――。

 その思いを強くし、電気バスの開発・製造に取りかかった。車両メーカーから車両を仕入れ、エンジンを外して電気モーターに取り替える。電気系統の部品も搭載する。こうして11年、サントリーホールディングスの電気バスを受注し、納入に成功する。次第に事業は電気バスの改造・販売へと向かっていった。

 国内における国産電気バス販売台数でトップシェアを誇る。例えば三重交通には、いすゞ自動車のエルガをベースにした乗員75人の電気バスを納入した。14年3月から近鉄線宇治山田駅、JR線伊勢市駅、伊勢神宮外宮および内宮をむすぶ路線バスとして運行している。

 三重交通が電気バスを導入したのは、三重県が始めた低炭素なまちづくりを目的とした伊勢市のモデル事業に基づくもので、緑豊かな伊勢神宮の環境を守るのが狙いだ。

 19年4月には長野県と富山県を結ぶ「立山黒部アルペンルート」に「eバス」と呼ばれる電気バスが登場した。関西電力に納めた15台の電気バスで、フラットフィールドにとって納入台数が最も多い案件だ。

 同ルートをそれまで54年間、トロリーバスが走っていた。老朽化して設備点検や修理などにコストがかかり、新しい電気バスに換えることで年間約4000万円を削減できるという。もちろん、電気バスのため、北アルプスのさわやかなイメージにもぴったりと合う。

■数々の企業や自治体などに電気バスを提供
写真提供:関西電力
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写真提供:白鷺電気工業
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立山黒部アルペンルートで2019年4月から運行開始した「eバス」は、フラットフィールドが製作したものだ(左写真の手前の車両)。熊本の白鷺電気工業には小型バスを無償提供(右)。主に、地域でSDGsの理解を広めることと、新規事業のヒントを探す目的がある