高いものを売るのは止める

 電気バスの納入先を見ると、フラットフィールドのマーケティング戦略のポイントが浮かび上がってくる。それは高価な車両価格をカバーする用途に、いかに食い込むかだ。

 車両を購入し、エンジンの改造などを行えば、価格は当然アップする。「当社の電気バスは一般的な車両価格の3倍以上、2500万円の車両価格なら7500万円で、高いもので1億円を超えることもある」(平野氏)

 一方、日本市場には中国の比亜迪股份有限公司(BYD)が参入しており、同社の電気バスは日本で6500万円以下と、フラットフィールドより安い。このハンディを乗り越えるため、日本製の信頼性に加えて、「電気バスでなければならない特別な用途」をうまく見つけることで販売に成功しているのだ。

 では、この先も電気バスの開発・販売に注力していくのかといえば、平野氏の考えは違う。「これからのSDGs時代、高いものを売るビジネスからソフトウエアを売るビジネスへと転換していきたい」と語る。

 19月12月、熊本市で九州電力の変電所や送電塔のメンテナンスなどを手がける白鷺電気工業に29人乗り小型バスを無償提供した。同社の本社ビルは、太陽光発電や地中熱利用換気などのシステムを導入し、エネルギー収支をプラスマイナスゼロに近づけた「Nearly ZEB」に認定されている。「来社するお客様に本社ビルと併せて電気バスを見てもらい、SDGsへの理解を深めてもらいたい。地震の多い熊本で、最近では、電気バスのバッテリーを災害緊急時に使えばBCP(事業継続計画)にも役立つ点が注目されつつある」と沼田幸広社長は語る。

 平野氏は、「これからの日本でどんなビジネスモデルが成り立つのか、私には分からない。白鷺電気工業のご協力いただき、それを探していきたい」と本音を語る。

 しかし、新しいサービスの芽は見え始めている。関西電力に収めた「eバス」について、走行後のバッテリーに関する情報を集めたデータロガーを解析、販売した。ハードから生まれる膨大なデータを分析するソフトサービスは今後有望だ。フラットフィールドの19年度の売り上げの半分がサービス関連の売り上げだという。

 天然ガスや燃料電池、電気を動力とする自動車の開発・販売を手がけてきた同社だが、中心軸となってきたのはCO2フリーだ。ゼロ・エミッションの実現を目指した挑戦は、これからも続く。