新たに2050年のサステナビリティ経営を見据えたビジョンを制定した三菱地所。そこには従来の不動産事業の枠を超えて、さらに進化を遂げようとする強い意思がある。

 三菱地所は2020年2月、「三菱地所グループのサステナビリティビジョン2050」を発表し、そのなかで2050年を見据えた2つの取り組みについて明言している。1つ目はRE100に加盟し、50年までに事業で使用する電力の100%を再生可能エネルギーで賄うこと。2つ目は、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)に賛同し、気候変動が50年までの事業に与える影響についてシナリオを作成・分析するとともに情報開示をすることだ。

 ビジョンの中ではスローガン「Be the Ecosystem Engineers」を打ち出し、「立場の異なるあらゆる個人・企業などが、経済・環境・社会のすべての面で、持続的に共生関係を構築できる場と仕組み(エコシステム)を提供する企業(エンジニアズ)であれ」という意味を込めた。

 「人が集まってくる、共生関係を構築する仕組みをつくるのが当社の役割。50年の社会を想定したとき、必ずしも今のようなオフィスビルの賃貸業がそのためのアウトプットの形とは限らない。時代の変化に応じてビジネスモデルも変わっていくだろう」と、サステナビリティ推進部専任部長の吾田鉄司氏は言う。今回のスローガンは、社会情勢の変化に柔軟に対応しながら持続的経営を目指す決意を示したものといえる。

4つのテーマを軸に推進

 2050ビジョンを達成するための、具体的なテーマとアクションを定めるロードマップとして位置付けられるのが、長期経営計画2030のなかで発表された「サステナブル・デベロップメント・ゴールズ 2030」だ。50年の社会を見据え、逆算して何をすべきかを策定したもので、同社がこれまで取り組んできた、環境、グローバリティー、コミュニティーなど7つの「マテリアリティ」(重点課題)をもとに、4つの重要テーマを挙げている。

 1つ目のテーマは「環境」だ。気候変動や環境課題に対応し、持続可能なまちづくりを進めるため、KPIを定めている。30年までにCO2排出量を35%削減(17年度比)するほか、再生可能電力比率を25%に上げる。加えて、食品、プラスチックを中心とした廃棄物リサイクルと排出量削減の推進の具体的目標も掲げており、30年までに廃棄物再利用率90%の達成および廃棄物排出量20%削減(19年度比)を目指す。さらに、持続可能な木材利用を推進するため、事業に使用する木材のトレーサビリティーを確保し、輸入木材伐採地の人権尊重や自然資源保護に配慮した木材利用も進めていく。

 2つ目はダイバーシティー&インクルージョンである。人々が健康で快適に活躍できる環境を目指し、社内では多様な人材が活躍できる環境づくりをさらに進める。まちづくりでは、様々な地域的慣習や宗教など異なるバックグラウンドを持つ人々が暮らしやすい環境を整えていく。「多言語対応にも取り組んでいるが、それだけではまだ足りない。ユニバーサルデザインなど建築の面からも積極的に取り組んでいきたい」とサステナビリティ推進部長の菊川嘉彦氏は語る。

 3つ目はイノベーションで、街づくりの視点から新たな発想やビジネスの創出をサポートし、人や企業が集まって新たな価値を「協創」できる場を設け、都市・産業の成長に貢献する。

 4つ目はレジリエンスで、災害に対応する強靭でしなやかなまちづくりを推進する。例えば、災害対策に向けた情報収集活動などを1つの建物内だけでなく、周辺の建物やエリアも巻き込んで行う取り組みを進めている。20年1月には、首都直下地震を想定した情報提供のプラットフォーム「災害ダッシュボード3.0」の実証実験を実施し、大手町・丸の内・有楽町の各エリアに約100台設置したデジタルサイネージ(電子看板)やウェブサイトを通じ、4カ国語で帰宅困難者の受け入れ施設や空き状況などの情報提供を行った。現在は実証実験の段階だが、今後もインバウンド観光客や日本で暮らす外国人が増えることを想定し、準備を重ねていく計画だ。