製造業の現場では少数派だった女性の活躍推進を積極的に進める。潜在的な女性のやる気やリーダーシップを引き出す独自の取り組みが注目される。

 製造現場でも活躍する女性のリーダーを1人でも多く――。名古屋市に本拠を置き、自動車のスパークプラグやセラミックス製品を製造する日本特殊陶業の取り組みが注目されている。2019年には女性活躍推進に優れた企業として、経済産業省と東京証券取引所が共同で発表する「なでしこ銘柄」の1社に選ばれた。

トップが環境づくりを旗振り

 そんな同社もかつては国内拠点では総合職を担う女性社員が少なく、女性のリーダーもほとんどいなかった。ところが13年、あるきっかけにより社内が一丸となって女性が活躍する環境をつくる「DIAMONDプロジェクト」を始めた。

 海外拠点では、男女関係なく社員が活躍し、女性管理職も珍しくない。プロジェクトの開始当時、社長だった尾堂真一・現会長は、赴任先の米国から帰任後、日本の職場に違和感を覚えていた。「女性は経営に欠かせない大事な資源。活躍できないのは本人にも、会社にももったいない。その強い思いがきっかけだった」と、同社執行役員を務める経営戦略本部担当兼副本部長兼戦略人事部長の山口智弘氏は説明する。

 プロジェクトの目的は多彩な人“財”を生かし、活躍の場を広げてパフォーマンスを上げ、会社の永続性を高めることだ。「風土を変える、意識を変える、環境を変える」という行動指針のもと、尾堂氏自ら積極的に参加するトップダウンによるセミナーや同社独自の研修制度、意識調査などといった活動が始まった。

 社員への意識調査では、育成や昇進について、女性と男性の感じていることの違いが浮き彫りになったという。「そもそも女性は昇進する機会がなく、そのため育成もされないという思い込みがあったようだ」と、同社経営戦略本部戦略人事部ダイバーシティ推進課の平野なつき課長は説明する。

 意識調査で現状を把握したうえで「女性が活躍するには何が必要か」「どう変化すればより活躍できるのか」を考え、ボトムアップで現場のアクションプランに落とし込んだ。

■「DIAMONDプロジェクト」5年間の取り組みとその活動
女性社員の活躍推進を目的とした、日本特殊陶業独自の組織横断的プロジェクト
(図版:日本特殊陶業)
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 まず一般職から「転勤なし」の総合職に転換できる制度を導入した。総合職は転勤を伴う配属の可能性があることが前提だったが、転勤しないことも選べるようにして家庭と両立しやすいように配慮した。また、よりスムーズに総合職として活躍できるように、総合職転換者が上司と共に参加する研修制度を設けた。

 女性社員が意欲を持って総合職に転換したものの、上司がどう仕事を割り当てればよいかが分からないという声が上がっていたという。上司が配慮のつもりで仕事の量や難易度を抑えてしまうケースもあった。そのため、「研修は女性本人だけでなく上司も参加することで効果が高まる」と、平野課長は指摘する。「仕事の要求が高すぎたり、あるいは前の職務と変わらないということがないようにしてもらう」(平野課長)。

 さらに課や部といった職場ごとに、女性社員が活躍する環境づくりのために毎年アクションプランを決めて、実践してもらう。進捗状況や成果をダイバーシティ推進課に報告する他、社内で共有する。成果の上がった取り組みをより多くの部署にも展開するのが狙いだ。

 工場の製造現場でも、女性活躍の推進やリーダーの育成に力を入れる。ものづくりの現場では女性が少なく、梱包や検品作業など業務が限定されていることも多かった。だが、「女性の参加により、職場でこれまでになかった視点で新しい気付きを得る例が見られる」と山口執行役員は指摘する。働きやすさや生産効率の改善につながったケースもある。