工場の女性専用ラインで成果

 同社のスパークプラグ工場の1つ、鹿児島宮之城工場では女性専用の製造ラインを稼働させた。3人の女性社員が、機械の保全技能を学び、関係部署との連携方法などのアドバイスを受けながら、上司や同僚と協力して業務を遂行した。

 もともと生産設備は、男性の体格や体力に合わせたものが多い。ここでは女性の手が届く高さや、使いやすい軽さの設備に切り替えるなどの改善もした。同社が女性社員と同様に活躍を期待するシニアなど幅広い年齢の従業員にも使いやすくなった。「自分たちが考えた改善案が形となったうえ、他の社員からも作業がしやすくなったと感謝された。これまでの苦労が吹き飛ぶほどのうれしい気持ちだった」と、ラインのリーダーを務めた女性社員は話す。

 他にも、男性だけが担っていた業務に女性も参加することで、「安全装置の数が増え労働環境も整った」「休暇を取りづらかった子育て世代の社員が、仕事の交代を頼める同僚が増えたことから休暇を取りやすくなった」といった効果を生んだ。

 女性管理職の数も増えた。全社に占める女性総合職の割合は、14年度は4.91%だったが、19年度は13.6%に、管理職に占める女性の割合は同時期に0.66%から1.9%に上昇した。

 こうしたものづくりの現場を含む日本特殊陶業ならではの取り組みは、冒頭の「なでしこ銘柄」の他、「新・ダイバーシティ経営企業100選」(17年)や「あいち女性輝きカンパニー優良企業」(17年)に選ばれるなどの評価を得ている。

全社員の意識を変えるための、様々な研修や教育プログラムが行われた
(写真提供:日本特殊陶業)

 19年からは女性管理職の計画的な育成に取り組んでいる。その1つとして導入したのがメンター制度だ。管理職として育成する6人の女性社員に1人ずつ役員がメンターとなる。率直に何でも話せる関係性をつくるため、評価する直属の上司ではなく、他部門の担当役員がメンターになる。自身の体験を伝え、悩みを解決するためアドバイスする。

 「今はまだ、男性管理職と同じようには働けないと感じる女性が多い」と平野課長は話す。身近に手本となる女性管理職がいない中、「リーダーとは人を引っ張るだけではなく、人に寄り添うなど様々なスタイルがあっていい」「急いで上を目指さずとも、一歩ずつ近づけばいい」と、個人の特性を生かした「自分らしいリーダー」の育成に力を入れる。

 最終的な目標は、「ダイバーシティ推進課をなくすこと」(平野課長)だ。男女区別なく活躍しやすい職場ができ、ダイバーシティが当たり前の環境をつくる。そうすればシニアや成長段階にある男性若手社員もそれぞれの力を十分に発揮しながら働ける。日本特殊陶業のダイバーシティ経営はさらに上を目指している。