シニア層向けに粉ミルクを販売

 森永乳業は、第一次世界大戦前後の栄養のある食品が少ない時代に、栄養価が高い「乳」を世の中に普及させるために創業した背景があり、公共性が高い事業内容で「当時からESGやSDGsの理念と直接、結びついていた」(久芳氏)という。

 現在も、社会に貢献する商品を発売している。例えば19年4月に機能性表示食品としてリニューアル発売した「トリプルヨーグルト」は、血圧・血糖値・中性脂肪の3つの機能性を表示した商品として注目されている。

 大人のための粉ミルク、「ミルク生活」はシニア層向けに販売している。赤ん坊が栄養を摂取している粉ミルクを健康のために飲む高齢者がいることを知り、カルシウムや鉄に加え同社独自の機能性素材であるビフィズス菌BB536やシールド乳酸菌®を含む商品として16年に発売した。コーポレートスローガンや経営理念を策定するに当たって重視したのは、社員自らが考えて行動できるようにすることだった。「夢共創プロジェクト」と名付け、社員にアンケートを実施し、どういう会社にしたいか、会社の強みは何かについて意見を募った。

 「一番多かったのは社会に役立つ会社で働きたいとの声だった。売り上げナンバーワンや給料が高いとの声もあったが、社会に貢献できることをやりがいに感じる社員が多いことが分かった」とコーポレート本部人財部の松本喜信氏は指摘する。

 アンケートに加え、社員による議論の場も設けた。公募で手を挙げた有志167人が話し合った。こうしてまとめた行動指針が「私たちの8つの問いかけ」だ。「お客さま」「感謝」「品質」「安全・安心」の4つは従来から取り組んできたことだが、これに加えて、「常に挑戦し続けているか」「『チーム森永』の輪を築いているか」「自分も仲間も活き活き活動しているか」「夢を語り合い未来へ向かって進んでいるか」を盛り込んだ。社員自らが社内を変えていこうという姿勢を反映させた。

■行動指針
出所:森永乳業
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 守りのESGから攻めのESGへ。「食品の安全や安心を重視するため、従来のように石橋を叩いて渡る姿勢ももちろん大事だが、社会が多様になり、変化のスピードが激しくなる中、指示されたことを忠実にやり抜くだけでは生き残っていけない。従来の枠組みを超えたチャレンジを促進することで競争力につなげたいと考えている」と久芳氏は言う。

 コーポレートスローガン、経営理念、行動指針を策定してから3年。「社長メッセージや社内の施策説明の際に『経営理念』を軸に説明したりコミュニケーションを図るようになった」(松本氏)。経営理念が社内の共通言語として定着しつつある。

 さらに理念を浸透させるため、毎年社員向けに対話型ワークショップ「夢共創フォーラム」を開催している。約100人が自主的に集まり、どのようなアクションプランに落とし込むかを議論している。

 冒頭の社内表彰制度のように、職場内の取り組みにも変化が出ている。「職場内での表彰に対しても、従来は予算達成することで表彰されていたが、行動プロセスや挑戦やチームワークなど、行動指針の8つの問いかけに対する実践面も重視されるようになった」と松本氏は言う。

  企業価値を高め、社会に貢献するための組織活性化の取り組みが続いている。