訪問販売で築いた地域のネットワークを活かし、情報提供の場を積極的に広げる。社員の創意工夫を土台にした社会貢献活動によって、企業や商品のファンを着実に増やしている。

 訪問販売を柱とするヤクルトが、地域貢献の取り組みに力を入れている。事業活動を通じ「世界の人々の健康に貢献する」ことを目指し、2018年3月には社会貢献活動方針を策定した。地域社会と協調しながらSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標4「質の高い教育をみんなに」をさらに推進していく方向性を示した。

 小学校や幼稚園、保育園などに通う子どもたちを対象とした「出前授業」が始まったのは12年前。ヤクルトならではの「腸の健康」をテーマにした食育授業は評判を呼び、18年度には日本全国で約4000回実施し、参加者数は約29万人となった。また海外でもインドネシアやフィリピン、メキシコ、中国などで盛んになり、実施回数は約4万1000回、参加人数は約316万人にも上った。

 「食育というと食べることの大切さを説くイメージですが、よい便を出すために必要な生活習慣に焦点を当てており、他にないユニークな内容と自負しています」と、同社広報室特別参与の三毛明人氏は話す。

 「出前授業」では先生との事前の打ち合わせやアンケートの実施などで、児童の起床と就寝時間、朝食をとっているか、排便はいつかなどを把握しておくという。児童たちと今の生活状況を共有した上で授業を進めれば、より「自分ごと」として受けとめられる。腸の仕組みが分かる工夫を凝らした模型なども用いて、実際の腸の長さや腸内細菌の重さを体感し、楽しみながら学ぶ。

 授業後、「給食で野菜を一生懸命食べるようになった」「うんちは汚いと思っていたけれど大切なものと分かった」といったフィードバックが寄せられる。

 「腸が健康だと病原菌やウイルスから体を守る免疫細胞の働きがよくなるという研究発表は多く、腸内環境は健康の要だと伝えたいのです」(三毛氏)と、科学的エビデンスに基づくプログラムだと説明する。

 19年には、日本全国に約100ある販売会社の社員585人が講師となり、業務の傍ら授業を行った。

■ 国内外におけるヤクルトの「出前授業」と「健康教室」活動
独自の消化管模型で、約1.5mの大腸や6mもの小腸を児童たちは手にとって“体感”できる。2018年度までに累計596の模型が国内外の「出前授業」で活躍中
海外での活動事例。左はメキシコの孤児院での訪問活動、右はインドネシアでの「健康教室カー」による講習風景
(写真提供: ヤクルト本社)

 一方、大人向けには、高齢者クラブや老人ホーム、婦人会などを対象とした「健康教室」を開催している。人体に良い影響を与える微生物であるプロバイオティクスの説明をはじめ、インフルエンザなど季節ごとに流行する疾患の予防や、生活習慣の改善など様々なテーマで健康長寿に関する講座を行っている。

 プログラムに体操なども加えた健康づくりを目的とした教室もあれば、医療や健康管理に従事するプロフェッショナル向けの勉強会もある。18年には日本全国で約1万2500回実施、参加人数は約37万人に上った。海外でも同様の取り組みを行い、約12万700回の開催で約656万人が参加した。