新日本空調は設立50年を迎えた2019年、「使命と価値観」を掲げた新たな企業理念を制定した。その理念の下、2020年2月に「SNK Vision 2030」を策定、空調技術を武器にESG経営を推進する。

 超高層ビルや大型ホテル、オフィス商業複合施設、半導体工場、エネルギー供給プラント、原子力施設など、あらゆる分野の顧客に信頼性の高い高品質な空調設備システムを提供する新日本空調。その歴史は、「世界のキヤリア」と言われた米国キヤリア社との合弁企業として東洋キヤリア工業がスタートした90年前にさかのぼる。

 日本橋三井本館や帝国ホテルなど日本を代表する建築物に空調設備を納入してきたほか、旧満州鉄道の全列車空調、関釜連絡船の全船空調、ホテル全館空調など様々な「世界初」の施工を手掛け、日本における空調設備のパイオニアとして確たる地位を築いてきた。

「使命と価値観」を新たな理念に

 1969年、東洋キヤリア工業のエンジニアリング部門が分離独立し、新日本空調が誕生する。同社はそのDNAを未来に継承するため、設立50周年を迎えた2019年度を次の新たな50年への節目の年と位置付け、若手・中堅社員から成る「ブランド戦略タスクフォース」を立ち上げてブランド戦略を再構築した。

 ロゴマークやコーポレートカラーを刷新したほか、19年4月には「使命と価値観」を掲げた新たな企業理念を制定。同年8月には「会社の方針」と社員の「行動指針」を再定義した。

 企業理念の「使命」には「社会と自然の調和を育み、未来へ向けた思いを満たす」という文言を掲げている。執行役員経営企画本部長の川原田雄二氏は理念に込めた思いを次のように説明する。

 「空調設備システムは、構築から建て替え、再生に至るライフサイクルにおいてエネルギー消費に深く関わっている。それは技術的課題を克服することで、気候変動問題や地球環境問題に直結する温室効果ガス排出量の削減に貢献できるということ。空調設備にかかわるエンジニア集団として、自然との調和は肝に銘じる必要がある」

 20年2月には、理念に沿い10年ビジョン「SNK Vision 2030」を策定した。そこでは基本方針として、「持続可能な地球環境の実現と、お客様資産の価値向上に向け、ナレッジとテクノロジーを活用するエンジニア集団を目指す」とうたっている。

 情報通信技術の急速な進歩とともに「モノ(所有)」から「コト(利用)」へと価値の定義が変わり、高効率・大量生産による消費社会から変化対応型の発想重視の社会への移行が進みつつある。今後、企業競争力に影響を与えるのは知的資本の創造やその活用と考えられる。

 「知的資本を構成する人的資本、組織資本、関係資本、サステナビリティ資本が価値創造の根幹。その堅固な根幹に支えられたビジネスモデルがグループの将来価値を創造する」と川原田本部長は話す。

 そうした方針の下、「SNK Vision 2030」には5つの基本戦略を盛り込んだ。第1は「人的資本戦略」で多種多様、多才な人材が有機的に結びつく人的資本の育成。第2は「デジタル変革戦略」。デジタル変革社会に即した高度情報活用を推進する。第3は「収益力向上戦略」。事業収益力の向上と施工遂行力の持続的成長を目指す。第4の「事業基盤増強戦略」では資本コストを意識した事業ポートフォリオを実現する。第5が「企業統治戦略」で、持続的地球環境の実現とステークホルダーの長期的な価値の向上を見据えたCSR・ESG経営の浸透と展開、それを支えるコーポレート・ガバナンス体制の強化に努める。

■ 「SNK Vision 2030」の概念図
図版提供:新日本空調
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