コア事業をSDGsで再定義

 こうして順調に成長してきたテクノシステムだが、水、食、電気の3つをコア事業とする事業形態は、今一つまとまりがないという印象はぬぐえなかった。その印象を一変させたのはSDGsだ。これもまた、きっかけは偶然がからんでいた。

 「当社は、20年2月に内閣府知的財産戦略本部の『経営をデザインする』というプロセスにおいて、知財や特許を使って収益化できている模範的企業として認定されました。その席で社長は、『水・食・電気を使っている企業というのは、SDGsの企業そのものだ』という評価を受けたといいます。自分たちの事業がSDGsを体現しているものだと改めて気づかされました」(久宗氏)

 しかも、SDGsの17の目標には、水、食、電気に関わるものが、それぞれ複数個ある。そこで、同社の事業を再定義し、「SDGsに関するテクノロジーを生み出す企業」と、SDGsを前面に出すことで事業を再定義したのである。そして、事業戦略にもSDGsの発想を積極的に取り入れることにした。

新しい街づくりへの挑戦

 象徴的なのが、街づくりへの取り組みである。これは、「SDGsの17項目をすべて盛り込んだ街をつくろう!」という社長の一声から始まった。ちょうど、同社は太陽光発電所を建設する目的で北九州市門司区に2万5000坪の土地を所有していたこともあり、その土地を新しい街づくりに活用することで話が具体化していった。

 とはいえ、水、食、電気だけでは街にならない。住宅建設はもちろん、学校、病院、コンビニなども必要だ。テクノシステム単独でできる話ではない。

 「そこは、SDGsの17番『パートナーシップで目標を達成しよう』の発想が大切です。技術をもったさまざまな企業や個人と情報交換を始めました。例えば、これからの街づくりには欠かせない遠隔医療、若い人を集めるために海外の大学の先端的なプログラムが学べる遠隔教育などが挙げられます」(久宗氏)

 街づくりには、災害に対するレジリエンスも不可欠だ。その点、同社では以前から被災者に対する水や食の提供を行っている。16年の熊本・阿蘇の水害、19年の東北の水害では、社長自らフードサーバーを担いで避難所に赴き、温かい料理を提供して喜ばれている。淡水化装置を使えばシャワー、トイレ用の水を提供でき、保健所の認可さえ取れれば飲料水としても提供できる。

 これまでの事業をベースに、パートナーシップを通じて、さらに大きな事業である「街づくり」に取り組んでいるのが、今のテクノシステムの姿である。

ヘルスケアを中心にした街づくり

 テクノシステムが考えた街づくりへの取り組みは、政府の肝入りで進められている未来都市構想であるスーパーシティと共通している。スーパーシティ構想のポイントは都市間のデータ連携にあり、5Gのような高速通信回線を使ったビッグデータの活用が前提である。19年5月、テクノシステムはスーパーシティ構想に沿った街づくりの素案をまとめたが、その時点でスーパーシティ法案が国会を通過していないためにペンディングの状態となっていた。

 そうこうしているうちに、テクノシステムはスーパーシティを進化させた「スーパーヘルスケアシティ」の構想を打ち出す。文字通り健康を重視したスーパーシティのことだ。そのきっかけは新型コロナの感染拡大だった。

 「横浜ランドマークタワーにある本社の窓からは、みなとみらい地区や横浜港が広く見わたせる。20年2月、船内で新型コロナが蔓延したクルーズ船ダイヤモンドプリンセス号も、ここから見ることができました。その姿を毎日窓から眺めているうちに、社長が『街づくりをするならば、ヘルスケアを中心とした街にしよう』と発案したのです」(久宗氏)

 ここで再び偶然の出会いがあった。19年の水害の際にテクノシステムが災害支援をした宮城県大郷町の町長から、「大郷町にある温泉施設を含む10万坪の土地で、街づくりをしてもらえないか」という提案が舞い込んだのだ。この土地は、門司と違って高低差が少なく造成が容易である。そこで、「スーパーヘルスケアシティ 誰も見たことがない街」と銘打って、まずは大郷町でヘルスケアを中心とした街づくりに取り組むことに決定した。