いすゞ自動車は2020年3月、脱炭素を掲げた「いすゞ環境長期ビジョン2050」を策定した。ビジョンでは製品ライフサイクルと事業活動の双方で温室効果ガスゼロを目指している。

 商用車メーカーとして、小型はピックアップトラックから、大型は16リッターの大排気量エンジンを搭載したトラクターまで、世界に幅広く製品を提供するいすゞ自動車。その歴史は、東京石川島造船所、東京瓦斯電気工業、ダット自動車製造のいわゆる国産3社にさかのぼり、創業は1916年と既存の国産自動車メーカーの中で最も古い。

 商用車(CV)、ピックアップトラック(LCV)の製造だけでなく、ディーゼルエンジンを他社製車両や産業用エンジンとしても供給する。車両の導入からアフターサービスまで、ライフサイクルを通じて「稼働」を守り、地域・社会の持続的な発展に貢献する企業を目指している。

 いすゞは2020年3月、グループとして長期的な視野で環境活動を進めていくための「いすゞ環境長期ビジョン2050」を定めた。

 背景には環境問題が深刻化する中で、グループ従業員一人ひとりが環境への負荷を最小限にする活動を続けることが必要との考えがある。パリ協定を意識して、中長期の展望を考えていかなければいけないという認識もあった。18年4月からの中期経営計画において、SDGs(持続可能な開発目標)のゴールとのひも付けを進めたことが、環境問題の重要性を再認識するきっかけになったという。

 いすゞ自動車サステナビリティ推進部環境推進グループの小杉信明氏は、「当社には各部門執行役員をはじめとする経営層をメンバーとして審議と決定を行う『地球環境委員会』がある。そこで議論して、従来あった『いすゞグループ地球環境憲章』を改定し、目指すべき方向性を明確化したのが環境長期ビジョン2050だ」と語る。

脱炭素は自動車メーカーの責務

 いすゞ環境長期ビジョン2050では、目指すべき方向性として、脱炭素社会の実現に貢献する製品の開発、脱炭素な事業活動の推進、製品ライフサイクル全体での環境負荷低減を挙げ、脱炭素を前面に掲げたのが大きな特徴だ。

 いすゞのCV、LCV、パワートレインは99%以上がディーゼルで、内燃機関中心に事業を進めていることから、気候変動対策は特に重要だと考え、脱炭素を打ち出した。そして、「気候変動対策」「資源循環推進」「環境リスク予防/対策」「生物多様性保全」──を環境重点4課題として定めた。

■ 「いすゞ環境長期ビジョン2050」の概念図
出所:いすゞ自動車

 18年に議論を始めた段階では、脱炭素はまだ社会的なコンセンサスにまで至っていなかった。そうした中、地球環境委員会では内燃機関を中心に事業をしている会社が脱炭素を打ち出してよいのかと喧々諤々(がくがく)の議論になった。ただメンバー全員が避けて通れない問題だという認識は持っていた。そこで、モノを運ぶ製品を作っている会社として、環境に負荷をかけない姿勢を示すことが大切だと合意でき、脱炭素という結論になった。

 いすゞ自動車サステナビリティ推進部環境推進グループの大原玲子氏は、「地球環境委員会は四半期に1回開かれるので、全体で8回会議を行った。その間の細かな議論は数え切れない。運用側との議論も重要なので、現場の役員、部長とも多く議論した。

 最初はできるかできないかといった話に終始していたが、議論を積み重ねる中で、次第に自分たちには子や孫の世代までの環境を考える責任があるというように意識が大きく変わり、最終的に脱炭素で合意できた」と振り返る。