現場の声を経営層と共有

 環境長期ビジョン2050策定に当たっては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次報告、IEA(国際エネルギー機関)年次報告、SBT(科学に整合する温室効果ガス削減目標)の自動車関連報告、業界の将来予測を参考にして、温暖化を1.5℃以下に抑制するシナリオ分析をした。自分事として考えてもらえるように、現場の社員の声を丁寧に聞き、経営層で共有した。

 「ワークショップでは、2℃、1.5℃、現在と変わらない状況と、3つのパターンを想定して議論した。結論は2℃も上がったら、そもそも生きていけない、事業どころではないだろう。そこで、1.5℃以下に抑えて、少しでも世の中を望ましい方向にもっていくということで一致した」と大原氏は語る。

 いすゞ環境長期ビジョン2050はコロナ禍にもかかわらず、メディアに注目されただけでなく、グループ内でも高く評価された。目標の達成まで厳しい道のりだが、方向性を示したことで、グループが一体となって環境活動に取り組みやすくなる。また21年度からの新中計では環境長期ビジョン2050の内容を反映すべく、ロードマップの策定を検討している。

 「環境長期ビジョン2050の策定をきっかけに事業課題をより長期的に考えていこうという機運が高まっている。社員にも予想以上に浸透している。特にディーゼルエンジンを作っているので、環境負荷の高い、悪いものを世の中に出しているのではないかと考えている社員もいた。会社としては温室効果ガスゼロを目指していくんだという方針を打ち出したことで、社員のモチベーションが上がった」と小杉氏は話す。

再エネの代替燃料を活用

 いすゞでは、気候変動対策について、製品のライフサイクル全体での温室効果ガスゼロと事業活動から直接排出される温室効果ガスゼロの両輪で取り組んでいく。そこで、まず事業活動で再生可能エネルギーを積極的に使うところから開始した。太陽光発電設備の藤沢工場への設置やタイのグループ会社への大規模な導入、それ以外の工場への拡大を進めている。

 一方、製品に関しては、他社とも協業しながらEVやFCVの電動化技術などの先端技術開発を進める。その大前提は、脱炭素された燃料を活用するという視点が重要だ。例えばバイオディーゼル、バイオガスなどバイオ燃料や合成燃料への切り替えも一つの手段と考えている。IEAの報告によると、長期的に見ても内燃機関が相当な割合で残るとされており、燃料改善などの従来の活動に加えて燃料の代替によって環境負荷を減らす。

 既にソーシャルベンチャーのユーグレナと共同で、石油由来の軽油を100%代替できる次世代バイオディーゼル燃料を開発し、藤沢工場のシャトルバスで使用を開始した。

 脱炭素の他にも様々な活動を展開中だ。例えば生物多様性の保全では、藤沢工場が18年度から神奈川県「かながわ水源の森林再生パートナー」に参加している。従業員と家族が間伐作業などを体験している。

■ 「いすゞ環境長期ビジョン2050」、既に具体化している取り組み
石油由来の軽油を100%代替可能な次世代バイオディーゼル燃料を搭載するいすゞのバス。2020年4月から藤沢工場で、代替燃料を使用したシャトルバスを運行している
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生物多様性保全活動の一環として、藤沢工場では「かながわ水源の森林づくり」活動で、森林再生パートナーとして保全活動をしている。足柄上郡やどりぎ水源保全活動で、従業員と家族が間伐作業や自然観察を体験している
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(写真:いすゞ自動車)

 いすゞは今後、環境長期ビジョン2050を事業計画に落とし込む。業務の中で脱炭素に向けた取り組みを進め、グループ全体に企業文化として根付かせていく考えだ。