車椅子的デザインを避ける

 オフィスもカーペットなどが敷かれているところがあり、移動に支障があると考えた開発チームでは、“車椅子のようなデザイン”を避けつつ、車輪サイズを移動しやすいレベルまで大きくする。加えて車輪の位置も体の真下にくるように工夫した。

 「屋外では坂や段差を移動することがあるため、車輪位置を後方にすることで重心を安定させる必要がある。その点、この製品は屋内限定と割り切っていたので、少ない力でオフィス内の移動やその場での旋回を軽快に行える機構を追求した」(浅田氏)。

 検証と実際のオフィスでの評価を重ねながら、座った状態でもオフィス内を自由に移動できるデザインを固めていった。

 2016年11月、現行製品に近い形のコンセプトモデルを新製品発表会に出展したところ、高い評価を得る。その評価をもとに社内でも推進の機運が醸成され、2018年1月、「Weltz-Self」のリリースに至る。

 この「Weltz-Self」の研究開発を進める過程で、自力で車椅子から乗り換えることはできるものの、脚を移動に使えない障害者などを対象とするモデルも必要だと気付く。電動駆動ユニット搭載の「Weltz-EV」の開発が、ここからスタートした。

 「既存の電動車椅子は外見にパイプなどの構造物や機械部分が目立っていたので、『Weltz-Self』同様にデザインをできる限りオフィス家具に近づけ、オフィス内で違和感がない印象を追求しました」と、デザイン本部製品デザイン部でデザイナーを務める新行内弘美氏は言う。

 機械部分は汎用部品を使用したため、車輪や転倒防止部材の配置などで制約も多かった。しかし、その制約の中で小回りが利き、移動しやすいという前提条件をクリアしつつ、「オフィスに溶け込むデザイン」を目指していった。

働き方の多様なニーズに応える

 「Weltz-EV」は2018年11月の新製品発表会に続き、福祉機器などの総合展示会である「超福祉展」にも出展。一般の障害者や高齢者から好評を得た。「これは車椅子ですかと聞かれることも多いが、あくまでオフィスチェアですと答えている」と、超福祉展で説明に立っていた新行内氏は強調する。展示会では客の反応もよく、自宅でも使いたいという声を多く聞いたという。

 「Weltz-EV」の発売は2019年春を予定している。「当初は、障害者や高齢者の車椅子ユーザーを対象とするニッチな製品だと考えていた。しかし試作と評価を繰り返す間に、例えば同じ場所で常に正面の机に向き合うだけでなく、振り向いた位置に置いた機器を使用するケースが多い健常者にも便利に使ってもらえると気付いた。

 近年は働く場所を仕事内容や目的に合わせて選択するABW(Activity Based Working)が注目されており、オフィスでの多様な働き方のニーズにも応えられると考えている」と髙橋氏は語る。

 「Weltz」に象徴的に表れているように、オカムラではオフィスで様々な立場の人が快適に働ける環境づくりを追求している。

■ 多様なワーカーのためにオカムラができること
近年では急激な少子高齢化が進み、ワーカー人口減少への不安がささやかれるようになった。そんななか、下肢や腰の機能が低下した高齢者や障害者の「はたらく場」への進出が増加すると同時に、 国も高齢者雇用継続や障害者の雇用率確保の施策を進めるなど、働く場の環境整備が求められている。オカムラは多様な人々が、企業とともに健康で活躍でき、働きがいのある環境づくりのための研究開発を行なっている

 この背景にあるのは、オカムラが目指す働き方改革「WiL-BE(ウィル・ビー)」だ。「Life(人生)にはさまざまな要素があり、その中のひとつとしてWork(仕事)がある」というワークインライフ(WiL)の考え方をベースに働き方改革を考え、従業員からのボトムアップで様々なプロジェクトが動いている。

 今後もいきいきと働ける環境の実現を目指し、取り組みを続ける構えだ。