近江商人の「三方よし」の精神をベースにCSV活動を展開する伊藤忠商事。サステナビリティ推進基本方針のもと、世界各地で雇用創出、環境保全、教育支援などに取り組む。

 伊藤忠商事は2018年、創業160年を迎えた。経営の根底には、様々なステークホルダーを重んじる近江商人の「三方よし」の精神が定着している。同年4月、この三方よしの精神を踏まえ、ESGの視点からサステナビリティ推進基本方針を策定し、マテリアリティ(重要課題)を特定した。 

 この基本方針を基に、グループとしてCSVを推進していく方向性を打ち出し、翌月に発表した新中期経営計画「Brand-new Deal 2020」においても、ESGの見地からマテリアリティを盛り込んでいる。

 「2018年は当社にとってESG元年となりました」と話すのは、食料カンパニー 生鮮食品部門 農産部長代行の二井野実氏だ。CSR活動自体は以前から展開していたものの、中期経営計画でサステナビリティ上のマテリアリティを初めて公開した。「経営陣がCSVを事業の上でしっかり実行していこうと認識し、CSVの取り組みにエンジンがかかったといえます」と、サステナビリティ推進室長補佐の村山量彦氏も指摘する。

 以前から社内各カンパニーにおいて、事業に紐付いた形で「自分たちに何ができるか」を模索し、CSVを推進してきた。たとえば住生活カンパニーでは、世界最大級のパルプメーカーであるフィンランドのMetsa Fibre社に2012年から投資を行い、持続可能な循環型社会の実現に向けた支援に取り組んでいる。

 同じく住生活カンパニーがパートナーとして開発・運営に参加するインドネシアのカラワン工業団地では、地元学生への奨学金支援や医療支援、乳幼児向け離乳食支給といった地域社会への貢献活動を展開している。

「Social Fence」実現に向けて

 近年、大きなCSVの取り組みとして注目されるのが、フィリピンで展開しているプロジェクトだ。

 米Dole Food Companyのアジアにおける青果物事業とグローバルに展開する加工食品事業を2013年に買収した。Doleはもともと1963年にフィリピンのミンダナオ島に農場を設立し、現地法人のDole Philippines社がパイナップルやバナナの生産と缶詰加工を手がけてきた。

 伊藤忠グループに入ったDole Philippinesがミンダナオ島で展開するCSVの取り組みは多岐にわたる。とりわけ象徴的な事業が、植林活動をベースとした環境保護・社会貢献をテーマとする複合プロジェクトと、地域の学校をサポートするプログラムだ。

 前者は「Ridge to Reef(山から海まで)」をキーワードとし、Dole PhilippinesのCSR部門からスピンアウトしたNGOと協業する。事業エリアの南コタバト州河岸の環境保護と海洋への土砂流失防止を目的として、2014年に活動を開始した。

 その後、プロジェクトに賛同する地域政府や取引先企業などの参加も得て、現在までに約29万本の木と約12万本の竹、約8000本のマングローブの植林をした。さらに土砂流失防止のための石垣を延べ468m建設した。これらに加えて、土石流による災害の未然防止、植林の苗木供給や樹木・石垣の維持管理による就業機会創出、地域住民の環境教育も複合的に実施している。

 一方、地域の学校をサポートする事業としては、Dole Philippinesの社員給与から一定額を天引きし、会社と労働組合が資金を上乗せして、地域の学校建設を進めている。社員・労組・会社が一体となった取り組みにより地域を支援するプログラムで、これまでに4カ所の学校を建設した。

■ Dole Philippines社の取り組み事例
地域で学校建設を推進。労組と会社が補填することで社員からの天引き額の5倍の金額を確保している
(写真提供:伊藤忠商事)

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