インドの水環境改善をサポート

 水環境基金が2018年度に助成した団体の1つが、認定NPOの「ICAジャパン(ICA文化事業協会)」だ。カナダに本拠を置くICAインターナショナルの加盟組織で、途上国での貧困改善や環境保護、女性・子供の地位向上、災害などの被災者支援といった事業を展開する。

 ICAジャパン海外事業部の塚本真喜氏は、「そこに住む住民こそが、地域の専門家。住民が積極的に地域開発に参加してこそ持続可能な発展が可能になる。私たちは、そのきっかけを作る」と説明する。地域の個人や組織、コミュニティが事業の主役となって主体的に課題を解決するように導くという。

 TOTOの考えとも合致した。「改善事業を単に行うのでは、地域に水環境や衛生を自分の力で守ろうという意識が根付かない。水環境基金は、事業を通じて人々の意識や行動にも変化を起こそうという団体を支援したい」と、宗総務部長は話す。

 ICAジャパンは水環境基金からの助成金を活用し、インドの干ばつの厳しい地域で、飲料水を確保する井戸の再生事業を実施した。

 インド中西部の内陸にあるマディヤ・プラデーシュ州ジャブア郡は、砂漠に覆われ、毎年干ばつが発生するなど気候変動の影響を強く受けている。雨期に集中豪雨があっても土壌は地下水を保水できず、村の井戸は枯れ、住民は日々遠距離の水汲みに時間を費やしている。行政の対応も後回しで井戸は枯れたまま放置されていた。過酷な水汲みは女性や子供の仕事とされており、女性に対する差別も根強いという。

インドのマディヤ・プラデーシュ州ジャブア郡。ICAジャパンは村内の井戸を再生した
(写真提供:TOTO)

 助成金は3つの村にある6つの井戸再生事業に活用された。今回の事業を始めるに当たり、ICAジャパンは井戸の再生による水環境の改善と、水汲み労働からの女性と子供の解放、衛生面の向上を目標に掲げた。

 単に井戸を再生するだけでなく、住民を集めた「井戸維持管理研修」というワークショップを4回開催した。住民が協力し合い、主体的に井戸を守る習慣を持ってもらうためだ。井戸の運用や保守のルールを住民らに議論してもらおうとしたが、当初は、男性と女性が同室で議論することを拒むこともあったという。だがICAのワークショップを通じて議論が展開し、最終的には地域の年長者を中心に、男女の区別なく、自ら井戸を守っていこうという意識が醸成され、運用や保守の計画をまとめあげた。

 助成した団体の活動を通じて、水環境や衛生面の課題に限らず、ジェンダー問題や児童労働といったより広範な課題の解決にもつなげられる。宗総務部長は、「基金を継続することで結果として、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも寄与したい」と話す。

 水まわりを中心とした豊かで快適な生活文化の創造という企業理念がDNAとして、水環境基金の取り組みにも脈々と引き継がれている。