二輪車の製造拠点でガスと電気を併用するハイブリッド熱処理炉を導入した。現場のスタッフが考え出した常識を覆すアイデアで約39%の省エネを達成した。
ホンダは2017年、熊本製作所の生産設備において大変革を実施。アルミ鋳造設備を刷新し、新型熱処理炉を導入することで、大幅な省エネを実現した。二輪車のフラッグシップ「Gold Wing」の、17年ぶりのフルモデルチェンジに合わせて取り組んだプロジェクトだ。
生産能力の増強が契機
熊本製作所は、同社にとって国内唯一の二輪車製造拠点。大型から小型に至るまで多彩な二輪車を生産し、同時にグローバルのマザー工場としての役割も担う。ここで生み出された生産技術・設備は海外拠点にも水平展開されるなど、効率の高いシステムによって環境に配慮した生産活動をリードする立場にある。
アルミ鋳造設備を刷新するきっかけの一つは、新型「Gold Wing」の発売だった。
2018年4月に国内販売が始まった新型「Gold Wing」は、フレームやフロントフォーク(前輪を支える部品)にアルミ部品を全面採用。従来に比べて38kgという大幅な軽量化とコンパクト化を実現した。
ところが、その量産には課題があった。国内で二輪車の生産を一手に引き受ける熊本製作所では、他の二輪車のアルミ部品も鋳造している。そこにアルミの採用を増やした「Gold Wing」が新たに加わる。作業負荷をシミュレーションしたところ、「Gold Wing」の量産が始まれば、既存のアルミ鋳造設備の生産能力では賄えなくなることが明らかになった。

(写真提供:ホンダ)
「新型Gold Wingの量産前は、アルミ鋳造部門の生産能力の範囲で稼働していた。しかし、新型「Gold Wing」は従来のフレームに加えてフロントフォークにもアルミを使用するため、設備稼働量が一気に増える。既存設備で賄えないとなれば、設備を増強するしかない。それが今回の設備刷新の直接的なスタート地点だった」と、熊本製作所アルミ鋳造部門の責任者が話す。