電線事業から派生した水処理製品をESGの柱の一つに位置づける。社会貢献度の高い事業に本業として取り組むことで、企業価値向上につなげる。

 住友電気工業は中期経営計画「22VISION」において、自らが提供する価値として「環境に優しい社会」を掲げている。ESGの「E」に相当する取り組みでは、環境配慮製品を拡大するとしており、その一例として「水処理製品」を挙げている。事実、同社が開発した水処理膜「ポアフロンモジュール」は、中国・台湾・韓国などのアジア地域をはじめ、世界各国で導入が進んでいる。

水処理膜のポアフロンモジュール。ポアフロンは外径2mm程度のチューブ状の膜で、微細な多孔組織を持っている(上は電子顕微鏡写真)
(写真提供:住友電気工業)
[クリックすると拡大した画像が開きます]

 電線ケーブルの製造を軸に発展してきた同社は、かつて銅線の絶縁材としてPTFE(4フッ化エチレン樹脂)という素材を使っていた。この素材をもとに同社で独自開発したのが、強度・耐薬品性に優れた多孔質材料「ポアフロン」だ。その開発の歴史は古く、すでに1960年代には製造技術を確立。半導体工場における不純物除去フィルターなどとして使用してきた。ところが用途が限定されるため、ビジネスとして大きく広がることはなかった。

 風向きが変わったのは2000年頃のことだ。水処理事業開発部部長の森田徹氏は次のように語る。

 「世間で水環境問題が注目され始め、工場排水や下水処理といった大きな規模での水処理ニーズが高まってきた。従来の水処理装置では、使い捨てのイメージに近い交換型フィルターを使うのが基本だった。しかし、大規模施設で使う設備部品としては、コスト面でも高くつき環境面でも負荷がかかるため、耐久性が高く長期間使用可能なフィルターが求められるようになった」

 そこで着目したのがポアフロンだ。耐久性に優れ、透水性も高いこの材料なら大規模プラントの水処理膜として活用できる。早速、同社は開発に着手し、2003年にポアフロンモジュールを製品化した。

 このモジュールを用いた「ポアフロン膜分離排水処理装置」は、活性泥炭(微生物)の働きで水中の有機物を分解処理し、さらに膜でろ過して水と微生物・微粒子などを分離するものだ。ポアフロンモジュールを組み合わせることにより、従来の標準活性汚泥法よりも高濃度の活性汚泥を処理でき、安定した処理水質が得られる。厳しい水質基準が設けられた国でも川など自然界に放流したり、工業用水として再利用することが可能だ。

 「需要が期待できる分野で、基礎技術が確立された材料をすでに持っているのが当社の強み。水処理では当社は後発だが、このアドバンテージを生かせば、マーケットに入っていける。世界の水問題解決にさらに貢献できると考えた」と森田氏は振り返る。