耐久性が認められた

 ポアフロンモジュールは2004年から中国で生産を開始。まずはアジア地域での販売に力を入れた。

 「国内マーケットは他社が先行していたため、まずはこれから環境対策を進める海外の国々をターゲットとして、営業に力を入れることにした。そんな時、韓国が河川を浄化する国家プロジェクトを実施するという情報をつかみ、提案したところ、下水処理場での採用が決まった」と、水処理事業開発部営業部部長の井田清志氏は語る。

 その後も地道な営業を続ける中で、同モジュールの強みを理解する販売パートナーを着実につかみ、台湾、中国などで導入先を増やしていった。拡販に際して最もPRに力を入れ、なおかつ最も顧客から評価されたポイントは、耐久性だと井田氏は言う。

 「ポアフロンモジュールは物理的な強度が高い上に耐薬品性も高い。水処理に長期間使うと当然、膜は汚れるが、ポアフロンなら薬品で汚れを落とせるので、繰り返し使うことができる。そこが一番の差別化要因だ。耐久性を数値で具体的に比較するのは難しいが、一般的な下水処理用途で言えば従来製品の1.5〜2倍程度の期間は持つ」

 さらに、油が多量に含まれる水など、従来のフィルターではすぐに目詰まりを起こしてろ過できないケースでも、同モジュールは対応ができる。その点も差別化の大きなポイントと捉えている。

規制強化でニーズが拡大

 アジア各国では水に関する様々な規制強化が行われ、それも追い風となっている。

 ここ数年、同社が最も力を入れているのが中国だ。同国でも水質規制が格段に厳しくなり、水処理製品の市場が広がっている。当初は工場排水の処理装置からスタートしたが、その後はゴミの最終処理場から出てくる浸出水の浄化、下水が整備されていない農村集落の生活排水処理など、規制対応の範囲拡大に伴い導入例が増えている。

 「当社では中国での売り上げが全体の5割以上に達している。今後は規模の大きな都市部の下水処理での採用も期待できる。中国国内の販売パートナーを増やし、さらに力を入れていきたい」と森田氏は言う。

 恒常的な水不足に悩む台湾南部では、産業排水を大量に出す企業に対し行政が水の再利用を義務付けており、対策のため大手石油精製企業が導入を決めた。同様に、乾燥した気候の中国・内モンゴル自治区で製鉄工場が採用するなど、水資源が少ない地域で、産業排水再利用の目的で導入するケースも増えている。

■ アジアを中心に水処理製品の導入が進む
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アジア各国で水質規制が強まるのに伴い、ポアフロンモジュールを用いた水処理製品の導入が拡大している。まだインフラが整備されていない中国広西省の農村部では、下水を処理する設備として採用された(左)。恒常的な水不足に悩む台湾南部では、大手石油精製企業が工業用水を再利用するために採用している(右)
(写真提供:住友電気工業)

 ポアフロンモジュールは新工場稼動による生産増強や、効率性の追求により、開発当初と比べて原価は4分の1以下に低減しているという。このような努力もあいまって、導入実績を着実に伸ばし、現在、同モジュールを採用した水処理設備が世界500カ所以上で稼働している。さらに住友電工グループ各社11カ所の工場でも排水処理に導入されており、グループ一丸となって水環境の保護に取り組んでいる。

 水資源の保護は世界的な課題だ。ポアフロンモジュールはそこに貢献することが期待されている。「自分たちの開発したものが、世の中の役に立つことが本望。当社はESGやSDGsといった言葉が生まれる前から、そのような思いでビジネスを続けてきた」と、森田氏も井田氏も口を揃える。

 そんな同社にとって、事業の根本にあるのは、約400年にわたって受け継がれる「住友の事業精神」だ。「自利利他、公私一如(じりりた、こうしいちにょ)」。すなわち、自社だけでなく社会と一体となって発展を目指す姿勢で、水処理事業に今後も力を入れていく。