潮崎 真惟子/オウルズコンサルティンググループ マネジャー

企業にとって児童労働や強制労働などの人権リスクが高まっている。人権デューデリを実施し、サプライチェーンの実態把握を早急に進める必要がある。

 もうすぐ2月14日。日本では、大切な人にチョコレートを贈るバレンタインデーがやってくる。華やかな包装紙に包まれたその甘いお菓子が、実は途上国で子ども達が学校にも通えず炎天下の中働いて生産されたカカオや砂糖からできていると知ったら、どう感じるだろうか。

世界では約1億5200万人が児童労働に従事させられている。写真はガーナの金鉱山で働く子どもたち
(写真:picture alliance/アフロ)

 多くの日本人は、自分の消費行動が間接的に児童労働や強制労働を助長している事実を知らない。そして多くの日本企業も、自社のサプライチェーン上で児童労働などの人権侵害が発生している実態や、それが自社のビジネスを揺るがす大きな経営リスクとなっていることに気づいていない。

 コロナ禍を受けて企業のサステナビリティ経営の重要性が増す中、この「ビジネスと人権」に関する国際潮流にキャッチアップすることは企業の競争戦略としても非常に重要だ。そのツールの1つとして、2020年12月にデロイトトーマツコンサルティング、オウルズコンサルティンググループ、NPO法人ACEの3者は「児童労働白書2020」を発行した。児童労働の実態や企業側のリスク・対応事例、各ステークホルダーの取り組み状況などを包括的にまとめた日本で初めてのレポートだ。ここでは同白書の内容をひも解きつつ、児童労働を含む人権分野における企業のリスクと求められる対応を考えたい。

“人権対応後進国”の日本

 実は、児童労働を含む「現代奴隷」に関与した産品を、日本は20カ国・地域(G20)の中で米国に次いで2番目に多く輸入している。その額はなんと、約470億ドル(約4兆8700億円円)にも上る。児童労働を引き起こしている事業者と直接・間接的に取引し、その製品を輸入することは、児童労働への加担につながるとされ国際的な批判の対象となっている。その品目は、電子機器や衣類、魚、カカオ、木材など多岐に及ぶ。

■ 現代奴隷(児童労働、強制労働など)が生産に関与した産品の輸入額(2018年)
出所: The Global Slavery Index 2018に基づき作成

 日本の大手企業の対応の遅れも指摘されている。人権に関する世界的な企業ランキングである「企業人権ベンチマーク(CHRB)」の20年の調査によると、評価対象となった日本企業の多くは中低位に位置付けられている。自動車ではトヨタ自動車が100点満点中11.6点、三菱自動車と日産自動車、スズキの3社は10点未満の評価だった。それ以外の業種では、ファーストリテイリングが26点満点中19.5点で比較的上位につけたものの、京セラが2.5点、キーエンスが1点などの厳しい評価を受けた。

■ CHRBでの企業のスコア分布(2020年)
出所:Corporate Human Rights Benchmark 2020(自動車以外の業種)に基づき作成