バイデン新大統領の政策

 今回の米国大統領選挙は、世界が温暖化対策を進めるうえで大きな分岐点となった。トランプ氏は米国第一主義の下、国際協調に背を向ける姿勢をとっており、20年11月4日、米国は同氏の主導によって温暖化防止の国際枠組みであるパリ協定から離脱した。世界の多くの国・地域が脱炭素への道を進む中、米国は化石燃料を推進する立場を継続する可能性もあったのだ。

 一方、バイデン新大統領は、これまで「気候変動は人類が直面する最大の課題」、「気候の危機に対処するため世界をリードする」と温暖化対策の重要性を訴えており、パリ協定に復帰するだけではなく、「主要排出国に対してパリ協定のもとで掲げる削減目標を強化するように働きかける」としている。また、バイデン新大統領は50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとすることを目指し、今後4年間でインフラ再建とクリーンエネルギー分野に2兆ドルを投資する計画を公約した。

 バイデン新大統領の主な公約を見ると、「新型コロナウイルスへの対策」に加え、「再生可能エネルギーを中心とした財政支出の拡大」「富裕層への増税」「金融業界やIT業界への規制強化」「国際協調や同盟関係を重視した外交政策と中国に対するけん制継続」となっている。20年7月に発表されたインフラ・クリーンエネルギー計画では、新型コロナウイルスによって落ち込んだ景気に対する刺激策として、インフラ投資による雇用促進とクリーンエネルギー化を同時に進めることが示された。政府予算に強い発言力を持つ議会の上下院ともに民主党が制したことから、これらの公約の現実味が高まっている。

■ バイデン新大統領の主な公約
出所:報道を基に筆者作成

バイデン新大統領誕生による米国の変化

 これまで温室効果ガス排出を実質ゼロとする方針を表明しているEU、日本、中国に、排出量世界2位の米国が加われば、経済規模で世界上位4カ国・地域が足並みをそろえることとなり、温暖化対策は大きく前進することとなる。

 米国は今、世界最大の産油国であり、脱炭素化の動きは産業界を中心に大きな反響を呼ぶことが予想されるが、新型コロナウイルス感染拡大を契機としたSDGs への関心の高まりは不可逆的な流れとなった。温暖化対策はバイデン新政権の重点分野であり、バイデン新大統領は就任早々からさまざまな施策を打ち出してくると考えられる。新⼤統領は就任当⽇にパリ協定に復帰する大統領令に署名を行った。就任後100⽇以内にサミットを開き、温室効果ガス削減⽬標の強化を呼びかける考えを⽰しており、温暖化対策を主導していく⽅針を表明している。