浅野 達/SMBC日興証券 ESGアナリスト兼科学技術アナリスト

低い落札価格がサステナブルファイナンス市場に与える影響は少なくない。想定される事業化へのリスクと市場への影響を開示資料を基に分析した。

 洋上風力第1ラウンドは、3海域の全てで三菱商事とシーテックを中心とするコンソーシアム(以下、三菱商事コンソ)が勝利した。同コンソによる事業概要を下の表に示す。

 三菱商事は20年に再エネに強みを持つオランダのエネコを中部電力と共同で買収した。今回の入札提案ではエネコのノウハウを十分に活用した可能性がある。

■ 洋上風力第1ラウンド3海域の事業概要
■ 洋上風力第1ラウンド3海域の事業概要
出所:経済産業省、三菱商事の資料を基にSMBC日興証券作成
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設備コストの大幅削減が必要

 選定された三菱商事コンソの電力供給価格は、1kWh当たり11.99~16.49円と、各区域の入札上限価格の同29円と比べて大幅に安い金額となった。そこで疑問となるのがプロジェクトの採算性である。

 政府は調達価格等算定委員会で、設備投資コスト(CAPEX)は1kW当たり(以下、同)51.2万円、運用管理コスト(OPEX)は年間1.84万円、目標内部収益率(IRR)10%などを前提として、入札上限価格の1kWh当たり(以下、同)29円を算定した。

 これに対し、設備稼働率を一律で35%と見積もり、三菱商事コンソの提示した供給価格11.99~16.49円によってある程度の採算性(プロジェクトIRRで3~4%水準)を確保しようとすると、CAPEX、OPEXを少なくとも30%程度低減させる必要があると推計される。

 特にCAPEX30%減の水準(35.8万円)は、先行する英国の現在のCAPEXと同水準である。英国は20年かけて約10GWの洋上風力導入を実現し、港湾整備や産業育成、サプライチェーン構築の効率化などによって現在の水準に到達している。今回は3海域を三菱商事コンソが開発するため、建設やタービンなどの部材調達、SEP船の運用などでスケールメリットをある程度得ることは可能だが、ここまで低減できるかは不透明である。

 例えばタービンだが、3海域全てで米ゼネラル・エレクトリック(GE)からの調達を予定している。GEは陸上風力タービンのシェアは高いが、洋上風力では競合するデンマークのヴェスタスや独シーメンス・ガメサを追う立場にある。このため日本市場でのシェア獲得を優先し、GEが安く納入する可能性もあるが、それでも限界があるだろう。

 採算性を高めるには、固定価格買取制度(FIT)以外での売り上げ対策も考えられる。例えばトラッキング付き非化石証書の販売や、20年のFIT期間終了後の長期電力売電を前提にした可能性もある。しかしそれも今回の供給価格を説明できる水準の寄与は想定しづらい。