大山 祥平/みずほリサーチ&テクノロジーズ 上席主任コンサルタント
今井 優里/みずほリサーチ&テクノロジーズ 主任コンサルタント

TCFDの新ガイダンスは開示を求める情報をいっそう具体的に示した。企業は、7つの指標の開示や、移行計画など新たな戦略策定が必要になる。

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TCFD「指標、目標と移行計画に関するガイダンス」(出所:TCFD)

 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は2021年10月、「指標、目標と移行計画に関するガイダンス」を公表した。新ガイダンスは、TCFDが17年6月に発表した「提言」において企業に情報開示を求めた「指標と目標」を中心に、より具体的な開示方法を示し、「移行計画」という新しい概念を導入した。併せて、TCFD提言の「附属書」に記された推奨開示事項も改訂された。

 ここでは、新ガイダンスの概要と附属書の主な変更点や企業が対応する上でのポイントを解説する。

 TCFDには4つの開示項目があるが、今回改訂が加えられたのは、「戦略」と「指標と目標」の2項目である。

 戦略には、新たに「組織に与える実際の財務上の影響」と「低炭素経済に移行するための組織の計画(移行計画)」が追記された。

 前者について、TCFDは従来から気候変動が企業に与える財務的影響の開示を求めていたが、改訂版ではより具体的に、「財務パフォーマンス(売り上げや費用など、損益計算書=P/Lに影響)」と、「財務ポジション(資産や負債など、貸借対照表=B/Sに影響)」に分けて開示することが推奨されている。また、後者の「移行計画」は今回の改訂の目玉と言えるため、詳しく解説したい。

 続いて、指標と目標では「産業横断的な気候関連指標カテゴリー」が提示され、温室効果ガス排出量の開示についても、文言の修正が行われた。いずれも重要な変更である。

■ TCFD提言「附属書」の改訂内容
■ TCFD提言「附属書」の改訂内容
提言附属書の改訂内容のうち、金融セクター向けの変更点を除いて示した
(出所:TCFD The Task Force on Climate-related Financial Disclosures _Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures に基づきみずほリサーチ&テクノロジーズ作成)

リスク抱える資産の開示を

 TCFDは、最終的に開示情報が産業横断的に比較可能となることを目指している。なかでも「指標と目標」は、特に投資家が求める財務影響を導き出すのに必要な定量的な情報であることから、当初から開示が推奨されてきた。

 しかし、企業の多くがその開示に苦慮し、定量情報の開示が足りないという問題意識から、TCFDは今回、7つの気候関連指標カテゴリーを示した。その多くは、日本企業による開示があまり進んでいない。