上野 貴弘/電力中央研究所 上席研究員

COP26では、これからの気候変動対策を方向付ける重要な合意がなされた。石炭火力について異例の合意に至るなど、これまでのCOP交渉に風穴を開けた。(本稿は、「日経ESG」2022年1月号(2021年12月8日発売)に掲載された記事を転載したものです)

 COP26は2020年代の最初のCOPであり、この10年間を「勝負の10年」と位置づけ、パリ協定の実施を方向付ける重要な決定がなされた。主な合意内容について、詳しく解説する。取り上げるのは主にパリ協定の第3回締約国会合(CMA3)で採択された合意文書だが、便宜上、以下ではCOP26の合意と呼ぶ。

COP26全体会合の様子<br><span class="fontSizeS">(写真:IISD/ENB)</span>
COP26全体会合の様子
(写真:IISD/ENB)

2℃よりも1.5℃を強調

 COP26での様々な合意のうち報道でよく注目されたのが「1.5℃」である。パリ協定は「2℃より十分低い温度上昇に抑え、1.5℃に抑える努力を追求」との温度目標を定めた。2つの数字を併記しつつ、前半部分の2℃未満が主軸で、1.5℃は文字通り、努力目標と捉えられていた。

 しかし、パリ協定を採択したCOP21の決定に基づき、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が18年に1.5℃特別報告書を発表すると、1.5℃への関心が高まり、21年の米国バイデン政権の発足後は、G7や日米、米英、米EU(欧州連合)などの主要先進国間の共同声明では1.5℃のみが使われるようになった。他方、G20や米中、QUAD(日米豪印)など新興国が加わる場での共同声明では、パリ協定の文言をなぞり、2℃と1.5℃の併記が続いた。排出が減少に転じていない新興国に、1.5℃に絞られることへの警戒感があることがうかがえる。

 そのような中で迎えたCOP26では、1.5℃をどのように強調するかが争点となったが、4つのパラグラフを組み合わせる複雑な形となった(下図)。まず、パリ協定の2℃と1.5℃を併記した上で、1.5℃の気候変動影響が2℃の場合よりも小さいことに触れつつ、「1.5℃に抑える努力の追求を決意」とした。努力追求まではパリ協定で使われた表現だが、「決意」が付いた点が新しく、2℃よりも1.5℃がより強調される形となった。その上で、1.5℃に抑えるにはCO₂排出量を30年に10年比で45%削減との数字を示し、20年代の取り組みの加速が必要とした。しかし、この中に「共通だが差異のある責任」などが挟み込まれた。各国が一律に削減するわけではないという新興国側の牽制を見て取れる。

■ COP26合意における1.5℃関連の記載
■ COP26合意における1.5℃関連の記載