2050年カーボンニュートラルの鍵となる脱炭素技術をシリーズで紹介する。長期的に大規模なCO2削減を担うCCSのビジネス化が進んでいる。

 「技術はある。客もいる。後はビジネスとしてどう成立させるかだ」

 CO2の海上輸送と海底貯留の事業化を目指す北欧石油大手のエクイノール(ノルウェー)。2021年3月11日、日本の環境省が開催したシンポジウムで同社低炭素ソリューション部門のペル・サンドバーグ氏はこう話した。

 工場や発電所の排ガスから、化学溶液などを使ってCO2を回収し、地下の安定した地層に圧入するCO2回収・貯留(CCS)。井戸を通じて地下数千mの帯水層にCO2を送り込むと地下水にCO2が浸透し、安定的に閉じ込められるという。サンドバーグ氏の発言通り、その要素技術は既に様々な業界で確立済みだ。今は商用化に向けてコスト削減の技術開発を各国のエンジニアリング会社が競う。肝は、CO2回収に必要なエネルギーの消費量削減と、貯留地の安定を見守るモニタリングの効率化だ。

■ 地下の安定した地層にCO2を閉じ込める
■ 地下の安定した地層にCO<sub class="fontSizeXS">2</sub>を閉じ込める
CO2は地下の「帯水層」に貯留する。帯水層は隙間が多くCO2をためられる。泥岩でできた「不透水層」はCO2が漏れないように遮へいする役目を果たす

欧州の350社が潜在顧客

 ノーザンライツと呼ぶこの事業は、北欧最大級の商用CCSだ。北欧沿岸部にある鉄鋼やセメントなどの工場、精油所、火力発電所などの排ガスから回収したCO2を、周回する船舶が積載するタンクに集め、海底下2600mにある帯水層に圧入するサービスの事業化を目指している。

 同社の他、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルとフランスのトタルが出資した。加えて、ノルウェー政府が総事業費の8割に当たる16億ユーロ(約2085億円)を投じた肝いりだ。

 24年から年間150万tの貯留を始め、顧客との契約が増えれば貯留量を拡大する。船舶が着岸できる専用港を持つ工場や発電所など350事業所を潜在顧客と見込む。その総CO2排出量は3億tに及ぶ。

 60社が同事業での貯留を検討中で、12社が契約書を基に検討しており、21年中に最初の契約締結を目指す。米マイクロソフトなどとの間で覚書(MOU)も交わした。マイクロソフトは事業をモニタリングするデジタル技術を提供する一方、自社のCO2排出を相殺するための貯留も検討している。

 サンドバーグ氏は「交渉中の輸送・貯留の価格は明かせないが、30年には1t当たり30〜55ユーロ(約3900〜7160円)に引き下げたい」と話す。欧州では大規模CCSビジネスの本格始動が3年後に迫っている。

ノルウェーで開発中のノーザンライツ事業で使われる船舶のイメージ(左の図)と海底設備(右の写真)<br><span class="fontSizeS">(写真左:ノーザンライツ、写真右:エクイノール)</span>
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ノルウェーで開発中のノーザンライツ事業で使われる船舶のイメージ(左の図)と海底設備(右の写真)<br><span class="fontSizeS">(写真左:ノーザンライツ、写真右:エクイノール)</span>
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ノルウェーで開発中のノーザンライツ事業で使われる船舶のイメージ(左の図)と海底設備(右の写真)
(写真左:ノーザンライツ、写真右:エクイノール)

コスト削減へ開発競争

 CCSは日本などが目指す50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)に欠かせない技術だ。近年は回収したCO2を、単に貯留するのでなく、燃料や製品の原料として有効利用する技術の開発が本格化している。国際エネルギー機関(IEA)によればCO2回収・利用・貯留(CCUS)は将来、年間69億tのCO2削減に寄与する。50年以降も、どうしても排出されるCO2を相殺する役割が期待され、70年までの累積CO2削減量の15%を担うという。