日本が20年12月に発表したグリーン成長戦略でも、50年に原子力発電とCCS付火力発電により電力のCO2排出を30〜40%削減する他、鉄鋼やセメントなど産業の製造プロセスでのCO2削減でも期待される。

 世界では21件の大規模CCS事業が展開されている。その多くが、天然ガス精製やアンモニア製造で排出するCO2を回収するものだ。回収コストがガスやアンモニアの価格に従来から転嫁されているため、追加コストを抑えられる。またCO2は、油田に圧入すると油層に取り残された原油の粘度を下げて採取しやすくする「石油増進回収(EOR)」に使える。産油国を中心に、回収・貯留コストを上回る収益を得られる事業が主流だ。

 だが今後、コスト転嫁や収益増につなげづらいCO2排出源でも採用を広げるにはコスト削減が必須だ。

 経済産業省によれば国内のCCS実証事業によるCO2回収コストは、現在、1t当たり約5300〜7900円。回収したCO2を地下に送るための井戸までの輸送に同約800円、地下の帯水層への圧入に同約2300円(圧入後のモニタリングを含む)かかり、CCSチェーン全体では同約8400〜1万1000円になるという。

 この場合、CCS付き石炭火力の1kWh当たりの発電コストは16〜18円になる。太陽光発電と競争力のあるコストにするには、CCSチェーン全体のコストを1t当たり約2000〜4000円に抑える必要がある。

世界初のバイオマスCCS

 日本でも、実証を通じたコスト削減技術の開発が進む。東芝エネルギーシステムズ(ES)は20年10月、福岡県にあるバイオマス発電所で排出されるCO2を回収する実証設備の運転を始めた。環境省の委託事業だ。

 グループ会社のシグマパワー有明が所有する5万kWの三川発電所で、1日に排出されるCO2の50%に当たる500t以上を回収する。再生可能エネルギーであるバイオマス発電でCO2を回収する、世界初のBECCS(CCS付きバイオマス発電)でもある。

東芝エネルギーシステムズのCO2回収実証設備
(写真:東芝エネルギーシステムズ)
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 排ガスからCO2だけを回収するのにアミン吸収液と呼ぶ化学溶液を使う。アミンの、低温でCO2を吸収し、高温になると放出する特性を生かす。

 ボイラーの排ガスから窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を除去した後、CO2や窒素、水素が混じるガスを「吸収塔」と呼ぶタンクに投入する。塔内で降り注ぐ吸収液が、ガスのうちCO2だけを吸収する。吸収液は熱交換器で加熱された後、「再生塔」でさらに加熱されてCO2を放出し、冷却されて吸収塔に戻る。

 CCSのコスト削減には、この吸収液の加熱や冷却に使うエネルギー消費を減らすことが効く。東芝ESをはじめ回収技術を擁するエンジニアリング会社は、加熱のエネルギー消費量を抑えるため、より低い温度でCO2を放出する吸収液の開発を競う。

 また加熱や冷却には、発電所のタービンの動力に使う蒸気の一部を使う。排ガスをプラント内で移送するのにも発電所で発電した電気を使う。本来なら発電効率を高める熱や、売電する電力をCO2回収で消費することとなり、発電所の収益源が減る。これを抑えるため、熱や電力を効率的に使うプラント設計に力を注ぐことも、コスト削減につながる。

 他に鉄鋼メーカーなどは、化学溶液を使わずに、分離膜や、ゼオライトなどのCO2吸収材を使う分離・回収技術の開発を進めている。国はこれらの技術開発により、CO2回収コストを1t当たり1500〜2000円に抑える方針である。