21年3月31日に、金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」で議論されていたCGコードの改訂案が公開された。

 今回の改訂CGコードでも「コンプライ・オア・エクスプレイン」を基本としている。コンプライ(実施)できなければ、その理由のエクスプレイン(説明)が求められるというもので、これは東証再編後も変わりない。株主総会においても、コンプライできていない原則について説明を求められる可能性がある。その際は丁寧に説明すべきだろう。

 CGコードは、「基本原則」「原則」「補充原則」からなり、プライム市場とスタンダード市場の企業にはこの全てが適用される。CGコード対応で大きな変化があるのは、現在、基本原則のみが適用されているジャスダックの上場企業だ。ジャスダック上場企業の多くは今後、市場再編後のスタンダード市場を目指すことになるだろう。そうなると基本原則にとどまらず、全原則が適用になる。そのため、全ての原則への対応状況をチェックする必要が生じる。

「戦略」か「数合わせ」か

 プライム市場の企業には、「より高い水準」のガバナンスが求められる。注目したいのは、独立社外取締役に関する基準だ。プライム市場では、取締役における独立社外取締役の比率として3分の1以上が求められそうだ。改訂前が2人以上だったので、大きな変化といえる。

 3月決算の企業は、6月の定時株主総会の終了後にコーポレート・ガバナンス報告書を東証に提出するのが通例だ。そこで提出する報告書は、現行のCGコードに対応したもので差し支えない。

 しかし、年内には東証再編に伴う市場選択手続きの中で、改訂後のCGコードへの対応が必要になる。21年の9月から12月にかけて、上場各企業は再編後のどの市場に上場を希望するかを東証に届け出る。プライム市場とスタンダード市場では、再編後の各市場に対応したコーポレート・ガバナンス報告書を12月30日までに提出する必要がある。

 改訂コードの中にはプライム市場に限定して推奨事項を説明している原則がある。こうしたプライム市場にのみ適用される原則は、22年4月以降に開催される株主総会の終了後に、これらの原則に関して記載したコーポレート・ガバナンス報告書を提出するよう求められる。3月決算企業であれば、22年6月の株主総会を目途に、プライム市場に適用される原則への対応を済ませればよい。

 20年12月時点の大和総研の集計によれば、独立社外取締役3分の1基準の達成率は、東証一部全体で約6割である。全ての東証一部企業が取締役の総人数を増やさずに3分の1基準を達成するには、1300人近くを社内取締役から社外取締役に振り替える必要がある(下の図)。3分の1基準を達成できていない企業がプライム市場を目指すのであれば、22年6月の株主総会が最後のチャンスとなる。コロナ禍の中で候補者の選定を進める工夫が求められる。

■ 独立社外取締役3分の1を達成するために必要な人数
現在の取締役総数は変えずに独立社外取締役を増やした場合で試算。例えば、取締役の総人数が9人で独立社外取締役が2人いる企業が3分の1基準を達成するために、あと1人増やす必要があるとして試算
(出所:大和総研)

 上場企業を機関設計別に見ると、監査等委員会設置会社の方が監査役会設置会社よりも基準の達成率が高い。社外監査役を2人以上置いている監査役会設置会社が監査等委員会設置会社へ移行して、社外監査役を社外取締役として選任し直せば、基準の達成は容易との見方もできる。今後、3分の1基準の達成のために、監査等委員会設置会社への移行を検討する企業が増えるかもしれない。

 ただし、単なる人数合わせのために監査等委員会設置会社に移行するというのは、投資家の納得を得られるかどうか疑問だ。自社にとってふさわしいガバナンス構造の選択であることを、株主に積極的に説明する必要があるだろう。