多様性は「目的」と「実績」を

 ダイバーシティ(多様性)について現行のCGコードでは、「ジェンダーや国際性の面」という要素を挙げていた。改訂案では、「ジェンダー、国際性、職歴、年齢」と「女性、外国人、中途採用者」が多様性の要素として記された。また、現行のCGコードは取締役会のダイバーシティについて規定しているが、改訂案では「管理職への登用等、中核人材の登用等」としており、取締役会だけでなく、社内全体の取り組みが求められそうだ。

 さらに、「多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである」と記述されていることにも注目すべきだ。管理職におけるダイバーシティに関する方針を定め、目標を設定し、その達成状況を公表するということになるだろう。女性の社外取締役を招へいする企業が多い現状を考えると、外部からの招へいだけでなく、社内の女性人材育成に取り組むべきというメッセージといえる。

 既に多くの企業は、女性活躍推進法に基づき、管理職に占める女性労働者の割合を把握したうえで目標を設定し、計画を公表するなどの対応を取っている。中途採用についても法的な開示義務が定められた。21年4月1日に施行された労働施策総合推進法の改正によって、常時雇用する労働者の人数が301人以上の企業に対して、中途採用比率の公表が義務化された。改訂CGコードは、これらの法的な開示を超えた対応を企業に求めるものとなっている。

 ジェンダー面に加えて、民族・人種、LGBT(性的少数者)をダイバーシティの要素にする動きが欧米では急速に高まっているが、中途採用者をダイバーシティの要素として明示する日本の取り組みは特徴的だ。そのため、海外投資家が関心を寄せるかもしれない。株主総会においても、自社のダイバーシティ推進の目的や実績について、株主に説明できるよう準備しておくべきだ。

 今後は、女性や外国人、中途採用者の管理職への登用などに関して、目標や状況の公表に取り組むか、そうしないのであればその理由を説明する必要が生じる。そのために、人材の見極めという人的な接触を伴う作業が必要となる。独立社外取締役の増員と同様、コロナ禍の中でどのように実施するかが課題となる。

質問の「ねじ曲げ」注意

 株主総会の出席者が多くなると、新型コロナウイルスの感染拡大が危惧される。株主総会を安全に開催・運営することは、企業の社会的責任といえる。そこで20年から導入が始まったのが、インターネットを利用して株主総会を実施する「バーチャル株主総会」だ。

 経済産業省が20年2月に公表した「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」で、現行の会社法で開催可能な方法を示している。現行法上は、物理的な会場を設けるリアル総会とリアルタイム配信を併用するハイブリッド型が可能である。リアル総会と同様の権利行使が可能な「出席型」と、配信を視聴する「参加型」の2種類がある(下の図)。

■ バーチャル株主総会の種類
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写真右は、2020年3月に富士ソフトが実施した「ハイブリッド出席型」バーチャル株主総会の様子。株主質問や議決権行使をリモートで実施する
(表の出所:大和総研(実施社数は商事法務研究会「株主総会白書」2020 年版))

 ハイブリッド型だとリアル総会を開催しなければならないため、出席者の感染リスクを減らす効果は小さくなる。そこで、リアル総会を開催しないバーチャルオンリー型の株主総会を可能にするための法改正が進められている。2021年から、産業競争力強化法の改正(4月5日時点では未成立)によって、経済産業大臣と法務大臣の確認を受ければ、総会会場を設けないバーチャルオンリー型の株主総会が可能になる。

 ただし、バーチャルオンリー型の株主総会にはガバナンス上の問題があるとの指摘が根強い。バーチャル総会では、インターネットや電話を通じて株主から質問を受けるが、そこに企業の選択や編集が入る余地が生まれる。企業にとって都合の良い質問だけが取り上げられれば、株主総会は緊張感を失ってしまうだろう。企業に対する不信感につながる可能性もある。

 ハイブリッド型であれば、リアル総会への出席機会があるので、出席した株主の質問が企業によってねじ曲げられる恐れは小さくなる。バーチャルオンリー型ではなくハイブリッド型こそ、コロナ禍時代の株主総会のベストプラクティスだと考える向きもある。ただし、ハイブリッド型は、リアル総会とバーチャル総会を両方開催することになるため、企業にとって運用の負荷は高くなる。企業は、手間やコストに見合う運営方法を選ぶ必要がある。

 株主総会に関しては、招集通知の早期発送・早期開示・英文開示を求める声もある。ただ、これらもコストと時間を要し、コロナ禍の中で企業の負担を増すものだろう。ウェブサイトを活用した開示など、工夫が求められる。

 コロナ禍が経営に及ぼす影響を心配する株主はいまだに多く、ESGに関心を寄せる株主が増えている。入念な準備が必要だ。