全固体電池が主流に

 現在、車載用電池の主流は、電解質に有機電解液を用いるリチウムイオン電池(LIB)だ。正極にはコバルトやニッケルなどの金属と複合したリチウム金属酸化物、負極には炭素やその合金などが主に用いられる。

 一方、全固体電池は、有機電解液の代わりに無機固体電解質を使う。正極はニッケルや硫黄など、負極は炭素のほか金属リチウムやシリコンなどを使う。現在のLIBは、体積当たりの蓄電容量を示すエネルギー密度が400Wh/ℓ程度だが、全固体電池はその2~3倍を狙える。蓄電容量を増やせるため1回の充電で走行できる航続距離を現状の400km程度から700km以上に伸ばせる上、急速充電時間も短縮できる。

 全固体電池は電解質が固体で、難燃性、耐熱性に優れることも大きな利点だ。LIBは通常、電解質に可燃性の有機電解液を使うため80℃以上で発火する危険性があり、電池パックに冷却システムを備える必要がある。これに対して全固体電池の固体電解質は200℃でも燃えにくく、150℃の高温にも耐えられる。冷却システムが不要なため小型化でき、より多くの電池パックを搭載できることから航続距離をさらに伸ばせる可能性がある。

 一方、車載用の全固体電池を量産化するに当たっては課題も多い(下の図)。難関は、何百回と充放電を繰り返すと、正極内の正極活物質と固体電解質の界面に抵抗膜が生じて出力密度が低下することだ。さらに固体電解質層が膨張するなど、電池の構成単位であるセルを作る際に様々な工夫が必要になる。

■ 全固体電池の構造と実用化に向けた課題
■ 全固体電池の構造と実用化に向けた課題
充放電を繰り返すと、正極活物質と固体電解質の界面に抵抗膜が生じて出力密度が低下するため、界面に被膜を作るなどの工夫が必要になる
(出所:NEDO「先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)」中間評価分科会資料)

トヨタを猛追するベンチャー

 全固体電池の研究開発で先行したのはトヨタだ。11年に東京工業大学の菅野了次教授らのグループと共同で、リチウムイオンが室温で固体中を液体中よりも速く移動する「超イオン伝導体」を発見した。電解質のイオン伝導率が高いほど、エネルギー密度の高い電池を作れる可能性がある。菅野研究室は世界最高水準のイオン伝導率を持つ電解質材料を次々と発見しており、トヨタはその実用化に取り組んでいる。19年には小型EVコムスを使った実験走行に成功、20年代前半に商用車への搭載を目指している。

 21年4月には上海モーターショーでEVの新シリーズ「bZ」のコンセプトカーを披露し、25年までに7車種を市場に投入するとしているが、全固体電池を搭載するかどうかも含めて仕様を明らかにしていない。