一方で欧米ではベンチャーの実用化に向けた動きが活発化している。車載用全固体電池の開発を手掛ける米クアンタムスケープは21年5月、実証ラインの建設でフォルクスワーゲンと合意したと発表した。工場建設の有力候補地はフォルクスワーゲンのEV製造拠点、ドイツのザルツギッターだ。当初から年産1GWhの規模で生産を開始し、24年頃から商用生産を始め、20GWhにまで規模を拡大する計画という。
フォルクスワーゲンが全固体電池の量産に向けた投資に踏み切ったのは、「クアンタムスケープが公表した電池セルの性能が同社の技術的要件を満たしたからだろう」と業界関係者はみる。21年1月に公表された資料を見ると、4組のセルを積層した多層セルについて、約22万kmの走行時に相当する450回の充放電で90%以上の容量維持率を示している。これは、長距離を走行しても電池の寿命が十分保証されることを示す(下の図)。
ドイツのBMWと米フォード・モーターも、全固体電池の開発に取り組む米国ベンチャーのソリッドパワーへの出資拡大を発表した。BMWは22年に実証用の全固体電池を調達し、30年までに搭載した商用車を発売する計画だ。
標準化でコストを下げる
今や全固体電池の焦点は、実証から量産プロセスへ移行しつつある。エネルギー密度が高く、耐久性や安全性に優れた電池をいかに低コストで作るかでしのぎを削る。
トヨタ執行役員の岡田政道生産本部長は、決算説明会で「車載用電池は、リードタイムをいかに短縮するか、エネルギーと資源の生産原単位をいかに小さくするかが重要。必要であれば電池の生産設備も自前でつくる」と発言した。パナソニックと電池生産の合弁会社を2社立ち上げているが、電池設計とプロセス開発を並行して進める「内製」に近い体制を敷いていることがうかがえる。

(写真:トヨタ自動車)