アーサー・ディ・リトル・ジャパンの鈴木裕人パートナーは、「世界を見渡すと、米ゼネラル・モーターズと韓国LG電子、フォルクスワーゲンとスウェーデンのノースボルトやクアンタムスケープ、トヨタとパナソニック、そして中国という4つの勢力図ができつつある」と話す。主力EVを中心に標準プラットフォームを開発し、電池や部材を規格化することで低コスト化を図る戦略だ。中でも電池はコスト全体に占める割合が高いため、規格化と“地産地消”が進むとみられる。

 「欧州は中国や韓国の電池メーカーが市場シェアを広げるのを嫌がり、域内の電池メーカーを育てようとしている。LIBは高価な輸入品なので、次世代電池は内製化したいという思いが強いのだろう」(鈴木氏)

 実際に、車載用電池の研究開発を国家プロジェクトに位置付けている国は多い。欧州や米国などの先進国だけでなく、中国や東南アジアの新興国なども力を入れている。

 日本では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が車載用全固体電池開発のオールジャパンプロジェクト「先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)」(18~22年度)を立ち上げ、国内の大手自動車メーカーや電池メーカー、素材メーカーが共同研究を行っている。既に体積エネルギー密度450Wh/ℓの単層セルの開発に成功し、現在は積層化技術に取り組む。並行して800Wh/ℓの次世代電池にも取り組んでいる。

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NEDOが開発を進めている全固体電池
(写真:NEDO)

全方位で次世代電池を開発

 50年までにEVは間違いなくモビリティの主役になる。日本の電池産業が生き残るには何が必要か。SMBC日興証券のアナリスト坂本博信氏は次のように話す。

 「電池のサプライチェーンの裾野は広い。そこをモノと情報が有機的に流れるエコシステムをつくり上げることだ。激しいEV開発競争で勝つためには、リードタイムの短縮とコスト削減が不可欠になる」

 既にリチウムやコバルトなどの希少鉱物は世界で争奪戦が始まっている。電池メーカーにとっては原材料の調達は死活問題。鉱山会社や商社、電極材料や電解質などの部品を作る素材メーカーや化学メーカー、さらに使用済み電池のリサイクルに至るまで機動性の高いサプライチェーン構築が必要だ。

 ただし、国内の自動車メーカーの動きだけを見ているのは不十分と坂本氏は話す。「欧州や中国の自動車メーカーはEVのプラットフォーム化を積極的に打ち出している。その動向を注視し、海外の規格に合った電池開発に取り組むことも生き残りには必要だ」(坂本氏)。

 パナソニックとトヨタの共同出資会社であるプライムプラネットエナジー&ソリューションズは、トヨタの開発戦略に沿った電池を開発しつつも、「海外の自動車メーカーへの供給も視野に入れている」(同社広報部)。量産ラインにトヨタ生産方式を導入し、品質と生産性の向上に日々取り組むことで、「グローバル競争で闘える電池メーカーを目指す」(同上)。

 世界トップレベルの材料研究と長年培ってきた電池製造技術を、日本は次世代につなげることができるか。これからが正念場だ。