小槌 健太郎/ジャーナリスト

米デュポンや米エクソンモービルなどで、環境関連の株主提案が可決した。金銭的利益だけでなく、公益も追求する「公益法人」への移行提案が相次いだ。

 米国の年次株主総会は2021年4月から6月にかけてピークを迎え、今年もコロナ禍での株主総会となった。米国では00年にデラウェア州がオンライン開催のみのバーチャル株主総会を認める立法をして以降、多くの州が会社法でバーチャル株主総会の実施を認めている。これまでオンライン開催のみのバーチャル株主総会を実施するのはIT企業の一部だったが、今年はコロナ禍で大半の上場企業がオンライン開催のみのバーチャル株主総会にかじを切った。

ワクチンの政府支援に懸念

 21年1月にバイデン大統領が就任して以降、米政府は急速にワクチン接種を進めている。米疾病対策センター(CDC)によると、5月末時点で新型コロナ感染症のワクチンを接種したのは人口の半数を超える1億7000万人近く。ワクチン接種率の上昇に伴い、米国では感染症の猛威はピークを越え、経済活動は正常化に向けて動き出している。

 だが、米国民のみならず世界にとって福音となるワクチンも、医薬品メーカーの株主にとっては心配のタネだ。

 医薬品メーカーの米ファイザーと提携先のドイツのビオンテックは、米生物医学先端研究開発局と米国防省から巨額の公的資金を得て新型コロナウイルスのワクチンを開発・製造している。ファイザーの株主総会では、この公的支援がビジネスにどう影響するか報告を求める株主提案が出された。

新型コロナウイルスの社会影響が続く。写真は、米ファイザーのアルバート・ブーラCEO(最高経営責任者)
(写真:ロイター/アフロ)

 医薬品開発が政府の資金援助という「ヒモ付き」になることで、ワクチンや治療薬の価格設定に影響したり、開発特許の公開を求められたりするのではないかと株主は懸念を示したのだ。同様の株主提案は、同業の米ジョンソン・エンド・ジョンソンや米メルクに対しても出された。

 大手薬局チェーンの米ウォルグリーンに対しては、CDCが「喫煙者や過去に喫煙していた人は新型コロナ感染症の重症化リスクが高まる」と警告したことを受けて、たばこ販売を続けることが消費者の新型コロナ感染症の健康リスクと、同社の評判にどのように影響するか報告するよう求める株主提案が出された。

 米政府による巨額の給付金支給という景気対策もあって、米国の個人消費は回復基調にあり、経済活動の正常化で企業業績も力強さを取り戻し始めているが、依然として新型コロナ感染症は社会に大きな影響を与えている。

エクソン、環境派に敗れる

 気候変動への対応が世界的な潮流となりつつある中、米企業に対する環境関連の株主提案が相次いだ。

 化学メーカーの米デュポンに対しては、同社が生産する工業原料用のプラスチック粒子(ペレット)が自然環境や人体にどのような影響を与えているか報告を求めた。数ミリ程度の小さなプラスチック・ペレットは産業用途のため、一般的なプラスチックゴミとは異なり、消費者が無造作に捨てることは考えにくい。だが、世界中の海岸や生態系の上流にいる大型魚などからペレットが大量に見つかっている。

 流出するはずのないペレットがなぜ自然環境から大量に見つかるのか。製造や輸送段階の適正な取り扱いや、マイクロプラスチックとして海洋や魚類などの生態系に大きな影響を与えている現状について、株主はデュポンの責任を指摘した。

 取締役会は既に様々な環境対策を取っているとして、提案に反対票を投じるよう株主に求めたが、結果は賛成票が8割を超えた。