富田 基史/電力中央研究所 主任研究員

金融がネットゼロに向け、投融資による排出量の計測を本格化させる。投融資を受ける企業は自社に加え、バリューチェーン排出量の開示が必要になる。

 投資や融資といった金融活動による温室効果ガス排出量の計測と報告、そしてこの排出量を2050年までにネットゼロにする削減目標の設定に、世界的な関心が集まっている。

 金融機関は、投融資先の企業に対して脱炭素化を促すことを通じて、経済全体の脱炭素化を加速させる重要な役割を果たすことが期待されている。その一方で、金融機関による投融資先の温室効果ガスの計測・報告は、発電など排出が多い一部の業種を対象としたものが多かった。だがその対象が、製造業やその他の業種にも広がっていくとみられる。

投融資の排出、計測法を示す

 投融資による温室効果ガス排出量(投融資スコープ3排出量)については、国際的な組織「GHGプロトコル」が11年に公表した「企業のバリューチェーンの算定・報告基準(スコープ3スタンダード)」において、基本的な考え方や計測・報告の手法を整理している。金融機関や企業のバリューチェーン排出量を指す「スコープ3」のうち、投融資先の企業の施設や設備、事業からの排出量は「カテゴリー15」と呼ばれる。

 このスコープ3スタンダードを基に金融機関の実務を踏まえ、方法論を具体化、発展させたものが、20年11月に公表された「金融業界のためのグローバル温室効果ガス計測・報告スタンダード」(PCAFスタンダード)である。

 このスタンダードを公表した金融機関のパートナーシップ「Partnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)」は、投融資スコープ3排出量の計測・報告スタンダードの策定と普及を目的として、15年にオランダの14の金融機関が発足させた。21年7月18日時点で、142機関(運用資産総額43兆4000億ドル)が加盟している。21年7月にはみずほフィナンシャルグループが加盟し、次いで、ニッセイアセットマネジメントも加盟を発表した。

■ PCAFの加盟機関数と運用資産額
出所:PCAFのウェブサイトを基に著者作成(2021年7月18日時点)
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 PCAFスタンダードの特徴の1つは、スコープ3スタンダードの計測方法を踏襲しつつ、報告対象と資産の種類を大幅に拡大したことである。

 スコープ3スタンダードは金融機関に対し、投融資先の温室効果ガス排出量のうち「金融機関の持分の割合に応じた排出量」を報告することを定めている。株式投資と、資金使途を特定する融資・債券投資などが対象となる。その一方で、スコープ3スタンダードは、資金使途を特定しない企業向け融資などに係る投融資先の排出量の計測・報告は任意だった。