PCAFスタンダードは、金融機関のバランスシートに計上される資産の大半について、資産クラスの特性を踏まえて6種類の計算方法を定め、投融資スコープ3排出量の計測・開示を求めている。

 下に示した計算式は、ある金融機関が非上場の企業に対する投融資スコープ3排出を計算する方法を示している。まず、投融資先の各企業(下の式では企業i)に対する持分比を計算する。非上場の企業の場合は、純資産と負債の合計に対する投融資残高の比である。企業iの排出量に持分比を掛けたものを全ての企業について合計したものが、投融資スコープ3排出量である。

■ 投融資の温室効果ガス排出量の計測方法
■ 投融資の温室効果ガス排出量の計測方法
PCAF「金融業界のためのグローバル温室効果ガス計測・報告スタンダード」の投融資スコープ3排出量の計測方法(企業向け融資・非上場株式の例)。金融機関は、投融資先の排出量を持分に応じて集計・報告する
(出所:PCAF「グローバル温室効果ガス計測・報告スタンダード」(2020年)を参考に著者作成)

 下の図では、PCAFが金融機関に対してスコープ3排出量の計算・報告を求めている資産を示した。上場株式・社債や企業向け融資・非上場株式、プロジェクトファイナンスの他、自動車ローンなども対象になる。スコープ3スタンダードで報告は任意とされていた資産も、報告対象となっている。

■ PCAFスタンダードが報告を求める資産
■ PCAFスタンダードが報告を求める資産
PCAFスタンダードの報告対象資産とGHGプロトコル「スコープ3スタンダード」(カテゴリ15)を比較した。従来のスコープ3スタンダードでは報告は任意とされた資金使途非特定の融資などが報告対象となったのに加えて、住宅ローンや自動車ローンなどの個人向け融資についても計測・報告基準が定められた
(出所:GHGプロトコル「スコープ3スタンダード」(2011年)とPCAF「グローバル温室効果ガス計測・報告スタンダード」(20年)を参考に著者作成)

全ての企業が報告対象に

 PCAFスタンダードのもう1つの特徴は、温室効果ガス排出量を計測・開示していない企業の排出量の取り扱いに関する考え方と計測手法を示したことだ。対象となる資産クラスについては、原則的に全ての資産について報告を求めている。

 またできるだけ、信頼性の高い温室効果ガス排出量のデータを利用することが望ましい。最も信頼性が高いのは、投融資先の企業がエネルギー使用量などに基づいて正確に計算し、第三者機関がその排出量報告を認証しているケースだ。