カーボンニュートラルの実現に向けて、鉄鋼の脱炭素化が課題となる。水素を使ってCO2を排出しない製鉄技術の開発に、世界の鉄鋼業界が挑む。

 日本、そして世界で2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)を目指すことが明確になった。日本が実現するには、国内の火力発電や産業の温室効果ガス排出を残り30年弱で大幅に減らし、ゼロに近づける必要がある。

 鉄鋼や化学などの素材産業は、現在の製造工程で石炭や石油を使うため、CO2を排出する。石炭や石油を水素やバイオマスといった材料に置き換える革新的な製造技術の開発が必要になる。なかでも19年度に日本の温室効果ガス排出量の約14.6%を排出した鉄鋼の脱炭素化は急務だ。

国の成長戦略で開発を支援

 高炉と呼ぶ大型設備を用いる製鉄技術では、石炭を蒸し焼きにしてつくるコークスを使い、酸化鉄である鉄鉱石を還元して鉄を取り出す。コークスの炭素と、鉄鉱石の酸素が結び付くため、CO2が排出される。

 CO2実質ゼロの実現へ、コークスを水素に置き換えて還元反応を起こし、鉄をつくる技術革新に日米欧や中国の製鉄会社が着手した。水素還元なら生じるのはCO2ではなく水だ。

 独フォルクスワーゲンや独BMW、トヨタ自動車などが自動車車体を製造する時のCO2排出の削減目標を掲げる。主要部材である鉄鋼の脱炭素化は日本の産業競争力を維持するのに必要になるため、国も技術開発を支援する。国は21年6月に発表した「グリーン成長戦略」で、50年までにCO2排出ゼロの製鉄を実現する工程表を示した(下の図)。

■ 国による製鉄のCO2削減技術の開発見通し
経済産業省などが「グリーン成長戦略」として示した工程表によれば、鉄鋼業界の「COURSE50」の大規模実証を25年まで実施する。他に水素還元製鉄や電炉拡大といった技術開発も並行して進め、40年代の導入を目指すという
(出所:内閣府、経済産業省など「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月18日))
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 とはいえ、国の工程表によれば、国内の製鉄所でCO2排出をゼロにする「水素還元製鉄」と呼ぶ技術が本格導入されるのは40年以降になる。30年といった時期にも段階的にCO2排出を抑えられる技術を確立し、自動車など最終製品メーカーの鋼材需要に応えていく必要がある。

 鉄鋼業界は、大量・高効率生産できる高炉を生かして複数の技術を開発中だ。高炉内の反応を高効率化させてコークス使用量を減らす技術、そしてコークスの一部を水素に置き換え、製鉄工程で発生するCO2を削減する技術に大別される。

炉内の反応を「高速化」

 高炉内の反応を促進するとして開発が進むのが、コークスの一部を「フェロコークス」という材料に置き換える技術だ。「還元反応を高速化できるためCO2排出を減らせる」とJFEスチール常務執行役員の花澤和浩・スチール研究所副所長は話す。

 同社は04年、小規模の実験設備で研究開発に着手。現在は、同社の西日本製鉄所 福山地区に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などと建設したフェロコークス製造設備を使い、22年度まで実証試験を行う。17〜22年度の技術開発費の総額は201億円の予定である。

JFEスチール西日本製鉄所福山地区で実証試験が進むフェロコークス製造設備
(写真:JFEスチール)