従来の高炉の内部では、3つの還元反応が起きている。1つ目は、熱風に含まれて炉内に投入される一酸化炭素(CO)と鉄鉱石による還元反応だ。これによりCO2が発生する。

 2つ目は、補助燃料として使う微粉炭と熱風に含まれる水分の水素で鉄鉱石の水素還元が起こり、水が生じる。そして3つ目が、炭素と鉄鉱石による還元反応で、これによりCOが発生する。

 炉内での反応のうち水素還元の割合は10%程度なのに対し、CO2が発生する還元反応は60%と大きい。試験高炉では、製鉄所内で発生する水素を大量に吹き込むことで、水素還元の割合を高めている。

 「羽口から吹き込む水素系ガスの量などを制御しながら、水素還元の割合を20%まで高められる最適な条件を確認した」と、COURSE50のプロジェクトリーダーを務める日本製鉄 フェローの野村誠治・先端技術研究所長は話す。数学モデルを生かした予測シミュレーションと、試験高炉での実践から最適な条件を探り、CO2削減率を高める制御を追求している。野村フェローは「10%を上回るCO2削減を確認した」という。

大量の水素の加熱に課題

 ただ、水素還元は、炉内の熱を使う吸熱反応だ。水素還元の割合を高めると炉内の温度が下がるため、水素を加熱して吹き込む必要がある。だが水素は燃焼性が高く、安全に加熱できる新技術の開発が課題となる。

 COURSE50は、CO2分離・回収も行って、CO2削減率をさらに高める。

 高炉から発生するCO2やCO、水素や窒素の混じったガスから、建屋に隣接する設備でCO2だけを取り出す。CO2を吸収する「アミン吸収液」を使う化学吸収法という技術だ。日鉄エンジニアリングは、このCO2分離・回収設備を商用化している。

 今後、回収したCO2を化学品の原料にしたり、地下などに貯留したりするCO2回収・利用・貯留(CCUS)が可能になれば、COURSE50ではCCSでCO2を20%削減する計画だ。水素還元による10%削減と合わせて、事業全体で30%の削減を目指す。ただ、貯留は国が推進することになっているが、貯留地の開発や貯留コスト、法整備など課題が残る。

 その先では、製鉄所内だけでなく外部で生産された水素や、高炉ガスから分離・回収したCO2を再び高炉に投入して還元に使うことも目指す。国はグリーン成長戦略で、回収したCO2を再利用してCO2を50%削減する方針を示している。

■ 水素直接還元の仕組みと課題
■ 水素直接還元の仕組みと課題
■ 水素直接還元の仕組みと課題
石炭で作るコークスの代わりに水素で鉄鉱石を還元する技術。ただし、実現には課題もあり、克服する必要がある
(出所:日本製鉄の資料を参考に作成)