コロナ禍の株主総会、経営者は「社会における企業の存在意義」が問われた。気候変動対策では、環境NPOが株主提案を通じて企業への圧力を強めている。

 「同業他社が来年度の業績見込みの発表を見送るなか、トヨタだけが発表に踏み切った。しかも5000億円の黒字になるという。この数字は当てにならない。なぜこのような不透明な発表をしたのか」

 2020年6月11日に愛知県豊田市で開催されたトヨタ自動車の株主総会。真っ先に質問に立った株主が、厳しい口調で経営陣に迫った。会場に緊張感が走った。

 この質問は、株主総会に先立って同社が5月12日に開催した決算説明会の内容を受けたものだ。新型コロナウイルスの影響で、世界販売台数が前期比約2割減の700万台になる予想を踏まえ、21年3月期は営業利益が8割減の約5000億円になるという予想を発表していた。ホンダ、日産自動車、マツダ、三菱自動車工業などの同業他社が相次いで来期の業績見通しの公表を見送るなか、トヨタだけが業績見通しの公表に踏み切った。

トヨタが示した「社会責任」

 冒頭の質問に対して豊田章男社長が語ったのは、社会に対する責任だった。「自動車部品の75%を調達しており、取引先企業に何らかの基準を出すのが責務だと考えた。数字は当てにならないかもしれない。しかし、最低限守らなければいけない基準を示したかった。皆さんに少しでも元気になっていただきたい。どんな世の中をつくりたいかを示したかった」

2020年の株主総会は、新型コロナウイルス感染症の経営への影響について株主質問が集中した。トヨタ自動車の豊田章男社長は6月11日の株主総会で、社会に対する責任を強調した。写真右は、同社が5月12日に開催した決算説明会での豊田章男社長
(写真:トヨタ自動車)

 しかし、他の株主も質問の手を緩めない。「仕入れ先や販売店にしわ寄せがくるのではないか。トヨタの1人勝ちに不満が出ないか」。

 この質問に豊田社長は、「1人でも勝たなかったらこの国はどうなるのか。勝ったものを自分たちだけのためだけでなく、何に使うのかが問われている」と回答し、株主に対して理解を求めた。

 20年の株主総会は新型コロナウイルスの影響を受け、これまでのものとは全く違う様相となった。多くの株主が来場するのを避けるため、来場自粛を促す企業や、入場人数を制限する企業が相次いだ。

 冒頭のトヨタは、招集通知で株主に来場の見合わせを呼び掛け、送迎バスや記念品(お土産)の配布を取りやめた。その結果、19年は5546人だった株主の出席は361人に減少。受付でフェースシールド着用のスタッフが検温を実施し、株主は他の株主と間隔を空けて座った。経営陣や株主のマイク前には、飛沫の飛散を防ぐ透明なついたてが置かれた。

 コロナショックはリーマン・ショックのインパクトを超えると言われている。そんななかで多くの株主が経営者に問いただしたのが、社会における企業の存在意義だ。コロナ禍のなかで企業がどのように社会に貢献できるのか。そして、変化する社会で持続的に成長するには何が必要か。多くの株主が、「社会」に関する質問を経営者にぶつけた。