経営者の選任は適切か

 ガバナンスに関する株主質問にも注目してみよう。

 例年、ガバナンス関連の株主質問では、増配や自社株買いを訴えるケースが多い。しかし20年は、これらの質問は鳴りを潜めた。新型コロナウイルスの影響によって経済が停滞したことで、多くの企業で厳しい経営状態が続いている。多くの株主が、株主還元より運転資金の確保を重視したことの表れといえる。

 ガバナンス関連では、20年は経営トップの育成計画や、取締役の多様性などの話題が目立った。これらはコーポレートガバナンス・コードでも、企業が取り組むべき重要課題と位置付けられている。

 J.フロント リテイリングは、20年5月に好本氏が社長に就任した。「経営トップの育成計画はあるのか」という株主の質問に対して、指名委員会委員長の橘・フクシマ・咲江氏が、「経営トップは複数の候補者を選定している。育成も含めた選抜計画を立てている」と答えた。

 日本電産は20年2月、永守氏の後継者と目されていた前社長の吉本浩之氏を降格させ、新たに日産自動車から引き抜いた関潤氏の社長抜擢を決めた。この理由を尋ねた株主に対して永守会長は、「後継者選びを急ぎすぎた。今回の新社長には、実績を踏まえて少しずつ任せていく」と説明し、理解を求めた。

■ 株主総会で経営者が語った「アフターコロナ」
<span class="fontBold">イオン 会長 岡田 元也氏</span><br>「太平洋戦争で何もかも失った時に匹敵するインパクト。平和でなければ小売業の繁栄はない。商品を供給し続けることで平和を取り戻す」
イオン 会長 岡田 元也氏
「太平洋戦争で何もかも失った時に匹敵するインパクト。平和でなければ小売業の繁栄はない。商品を供給し続けることで平和を取り戻す」
<span class="fontBold">いちご 会長 スコット・キャロン氏</span><br>「自社株買いは、したくてしょうがない。しかし、第2波、第3波などの万が一に備えた。企業買収の可能性も残しておきたかった」
いちご 会長 スコット・キャロン氏
「自社株買いは、したくてしょうがない。しかし、第2波、第3波などの万が一に備えた。企業買収の可能性も残しておきたかった」
<span class="fontBold">不二製油グループ本社 社長 清水 洋史氏</span><br>「コロナによって、社会の仕組み、仕事の仕方、消費者心理、市場構造が変化する。社会的価値をつくれる会社しか生き残れない」
不二製油グループ本社 社長 清水 洋史氏
「コロナによって、社会の仕組み、仕事の仕方、消費者心理、市場構造が変化する。社会的価値をつくれる会社しか生き残れない」
(写真:株主総会のインターネット配信)

多様性は力になっているか

 近年、取締役の多様性が重視されている。実効性はどうなのか。株主から質問が上がった。

 KDDIが6月17日に開催した株主総会では、取締役の選任について「消費者の視点を持った取締役を入れたらどうか。女性の社外取締役は活躍しているのか」という質問が出された。取締役執行役員専務の村本伸一氏は、「取締役会の実効性評価を年に1回行っており、女性、男性、関係なく闊達な意見を頂いている。消費者目線についても社外取締役から意見を頂いている」と答え、理解を求めた。

 6月18日の三菱自動車の株主総会では、「取締役が15人いるが多すぎないか」という声が上がった。加藤隆雄CEOは、「大株主の構成を踏まえつつ、3分の1以上を独立社外取締役にし、知見や多様性などをバランスした」と説明し、コーポレートガバナンス・コードの順守をアピールした。

 最近では、取締役の経験やスキルを一覧表にした「スキルマトリックス」を招集通知に掲載する企業が増えている。取締役に求める役割を明確にし、スキルや経験などの多様性を力にしようという動きである。経営者の選任はもとより、取締役会の議論は株主から見えにくい。株主の関心は、取締役会という経営の「中核」に及んでいる。

■ 「ガバナンス」に関する主な株主質問と会社回答
■ 「ガバナンス」に関する主な株主質問と会社回答
[クリックすると拡大した画像が開きます]