上野 貴弘/電力中央研究所 上席研究員
柳 美樹/日本エネルギー経済研究所 研究主幹

2021年7月、欧州委員会は輸入品に炭素価格を課す新制度案を発表した。米国でも法案が提案されている。日本も戦略的対応が必要になる。

 欧州連合(EU)と米国は、パリ協定の下で掲げる目標の達成に向けて、気候変動対策の抜本的な強化を検討しているが、その中で「炭素国境調整」の併用が浮上している。

 炭素国境調整は、国内と国外の炭素価格の差を埋めて、自国から他国への「炭素リーケージ(排出の漏洩)」を防ぐことを目的とする措置である。

 炭素コストを課せられている自国製品が、課せられていない他国製品よりも競争上、不利になれば、自国での生産が減り、他国での生産が増え、それに伴い炭素の排出も他国に流出する。他国の炭素効率(生産量や売上高当たりの排出量のこと)が低ければ、自国の排出は減っても、世界全体では排出が増えてしまう。

 こうした事態を防ぐために、国境において輸入品には自国と同等の炭素コストを課し、輸出品にはいったん課した炭素コスト相当額を還付する。そうすることで、国内市場では、国産品と輸入品の両方に同等の炭素コストが課せられ、海外には、炭素コストが乗らない形で製品が輸出される。自国の政策を、炭素リーケージを防止しつつ強化するには、国境炭素調整が有用ということである。

■ 炭素国境調整の仕組み
■ 炭素国境調整の仕組み
出所:著者作成

 EUでは、欧州委員会が21年7月14日に2030年までの温室効果ガス削減目標(1990年比55%減)を達成するための政策パッケージ案を発表し、その1つとして「炭素国境調整メカニズム(略称CBAM)」の規則案を示した。今秋以降、立法府に当たる欧州議会とEU理事会で審議される。

 米国では9月以降、連邦議会で巨大な政府支出を伴う気候変動対策法案が審議されるが、その際に「炭素汚染者輸入課金」が検討されることになっている。