欧州委員会は23年からCBAMを開始するとしているが、最初の3年間を移行期間とし、輸入者に排出量(スコープ1と2の両方)の報告義務を課すものの、CBAM証書の納付義務は課さない。移行期間の終了前には、欧州委員会が対象を間接排出に拡張する可能性について評価する。

 26年からは証書の納付義務を課すが、10年かけて段階的に課していく。域内で排出量取引の排出枠の無償割当を、26年から10年かけて毎年10%削減するのに合わせるという。つまりCBAMが完全な形で実施されるのは35年からとなる(下の図)。

■ CBAMの段階的導入のイメージ
■ CBAMの段階的導入のイメージ
出所:著者作成

欧米間で制度案に隔たり

 米国では、ジョー・バイデン大統領が20年の選挙で炭素国境調整の導入を公約したものの、これまで政権側の具体的な動きはほとんどなかった。だが、議会では21年9月以降の法案審議で「炭素汚染者輸入課金」を検討することが、8月11日に上院で可決された財政決議で決まった。

 その導入是非や具体的な設計はこれから審議に入るため、今のところ具体的な制度案はない。ただし、バイデン大統領に近いとされるクリストファー・クーンズ上院議員らが7月に炭素国境調整に関する法案を提出しており、同法案が審議の際に参照されるかもしれない。

 法案の内容は欧州委員会のCBAM提案と比べて非常に簡潔で詳細な設計は不明だが、2ページの表には読み取れる範囲で設計の方向性を示した。欧州委員会の提案とかなり異なる設計となっており、同じ炭素国境調整でも、制度設計によってその態様は様々であることが分かる。

 特に欧米間で考え方が大きく異なるのは、調整対象とする内外の政策である(表の②と⑧)。欧州委員会の提案では、域内の排出量取引のコストを輸入品に賦課しつつ、輸出国の炭素価格分を差し引く。どちらも炭素排出に対して明示的な価格が付いている。他方、クーンズ議員らの法案では、明示的な炭素価格だけではなく、規制やプログラムなどの価格は付いていないが炭素コストを発生させている政策も合わせたコストを輸入品に賦課する。ただし、米国連邦政府と同程度に野心的な法・規制を執行する国からの輸入品を、炭素コスト賦課の対象外としている。

 炭素に価格を付けないがコストを発生させる規制など政策は「暗示的炭素価格」と呼ばれることがあるが、炭素国境調整においてこうした政策を考慮すべきかどうかは今後、大きな争点となるだろう。