航空業界のCO2規制が強まる中、低炭素なジェット燃料が対策の決め手となる。世界的な需要拡大を見込む企業が連携し、新産業の創造に挑む。
2021年6月17日、東京・羽田空港から、国産のバイオジェット燃料を搭載した定期航空便が飛び立った。日本航空JAL515便札幌行きと、全日本空輸ANA031便伊丹行きである。
搭載された燃料はいずれも新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで開発されたもの。関係者はほっとすると同時に、事業化への道のりを考え複雑な心境だったにちがいない。
国際航空で強まる排出規制
世界で航空輸送の温室効果ガス排出規制の強化が進んでいる。
国際民間航空機関(ICAO)は、21年以降の国際航空輸送におけるCO2排出量を19年以下に抑える目標を掲げる。達成に向けては削減量を売買できる市場メカニズムを利用した排出削減制度(CORSIA)を導入、航空会社に無償で許容している排出量を段階的に減らして対策を促す。
対策の中心は、持続可能な航空燃料(SAF)の導入だ(下の図)。SAFは、生物由来の資源を原料としてつくられるバイオジェット燃料のほか、大気中のCO2を捕捉し水素などと反応させてつくる液体燃料(PTL)など技術の多様化が進む。世界の民間航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)は、50年時点での排出量を05年比で半減させる目標を設定しており、最も重要な対策はSAFだと強調している。

(出所:航空輸送アクショングループ「WAYPOINT2050」)
21年7月、欧州委員会が公表した温室効果ガス削減のための政策パッケージ「フィット・フォー55」は、EU圏内の空港を利用する航空会社に対してSAFの使用を義務付ける一方、ジェット燃料の供給業者に対しては、SAFの供給割合を35年までに20%、50年までに63%に引き上げることを求めている。